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基礎編1第1回 基礎編1　第1回 「シリコーン離型剤」 「基礎の基礎編1」では、シリコーンの持っている最も基本的な性 質が“なぜ”生じているのか、分子の世界にさかのぼって考えてみ ました。 今回からは読者の皆さんから多数いただいた質問の中で、シリコー ン製品の比較的わかりやすい性質について勉強していきましょう。 まず始めはシリコーンの「離型剤」からです。 シリコーン離型剤って、どんな所に使われているんですか？ 簡単にいうと、いわゆる金型を使った成 型加工に類するものに使われています。 たとえばタイヤなどのゴム成型、包装用プラス チックなどの樹脂成型の他、金属成型、食パン などの食品のベーキング用途などが一般的です が、電気?電子用の熱可塑性樹脂などの成型部 品にも使われています。 　また、複写機のトナーの離型剤、印刷工程では紙の離型?潤滑剤 としても活躍しているんですよ。 どうしてシリコーンには離型性があるんですか？ シリコーンは分子の表面をメチル基で覆われているため表面 エネルギーが低く凝集力(分子同士の引き合う力)が低いという 特徴があります。わかりやすく説明するために、凝集力の高い水と 凝集力の低い油を例にとって説明してみましょう。 　まず、水の上に油をたらすと、油の分子同士の凝集力よりも水の 分子と油の分子の引き合う力(凝集力)の方が強いため、油は水の上 に薄く広がります。逆に、油の上に水滴を落とすと水の分子の凝集 力の方が油と水の分子間の凝集力より強いため、水滴はそのまま丸 い固まりの状態を保ち、油と最小限の接点しかもたないようになり ます。 　こうした現象を、凝集力がほとんどの物質より低いシリコーン離 型剤に置き換えて考えると、型の表面に塗られたシリコーンが薄く その表面に広がり、その上に流し込まれた樹脂が硬化後は簡単に 型=シリコーン膜から離れる理由が理解できます。 基礎編1第1回 そういうこなんですか。ところで離型剤というと他にどんな 種類があるんですか？ 高級脂肪酸、その石鹸、ワックス、動植物油など、用途別に 大きく分けて10種類くらいありますが、離型性が低かった り、仕上がりの表面が荒れる、耐熱性が低くて熱分解物が付着する などの欠点があります。 そうした離型剤に比べてシリコーンはどんな所が優れている んですか？ 前述の他の離型剤の欠点をカバーする特長をもっています が、樹脂の成型加工では型に流し込まれる樹脂類が高熱のこ とが多く、耐熱性に優れている点がシリコーンの最大の長所となっ ています。他には、 1. 複雑な形状でも表面にきれいに広がる 2. 離型効果の持続性に優れている 3. 化学的にも生理的にも不活性であることから、広範囲の材質 の成型に使える などの特長があります。 シリコーン離型剤はオールマイティーですね？ そんなことはありません。成型品の表面 にシリコーンの離型剤が残ると、成型品 に接着剤が使えなかったり、塗装できなくなる という欠点がありますので、オールマイティー というわけにはいきません。また、フッ素系の 離型剤もシリコーンと同じような特長をもって います。もっとも、ペインタブルタイプのシリ コーン離型剤は開発されましたし、フッ素系離型剤にも軽い離型性 を得にくい問題があったりしますので、シリコーンはかなり優れた 離型剤と言えると思います。従って、お客さまがシリコーン離型剤 の特長をよく掴んでいただいて、用途に応じてご活用いただくこと が、大事だと考えています。 今後もシリコーン離型剤の活躍が続きそうですね、お話ありがとう ございました。 基礎編1第1回 講師：　長縄　努