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- 1 - 「哲学?思想の基礎」配付資料 4 ４.正義を考える その４：リバタリアニズムの立場 4.1 ノージックのリバタリアニズムの構想 ロバート?ノージックの『アナーキー?国家?ユートピア』(Nozick, Robert, Anarchy, State, and Utopia, Blackwell, 1974)に 基づいて、リバタリアニズムについて考える。「リバタリアニズム」(libertarianism)は「自由至上主義」とか「自 由尊重主義」と訳される。 ノージックはリベラリズム以上に個人の自由や権利を尊重する。ノージックは、「私は個人の諸権利を強い形で 定式化することから出発する」(ノージック『アナーキー?国家?ユートピア』iv頁; p.xi)、と述べている。彼は、「個人の 権利は国家(state)にどの程度の活動の余地を残すものであるのか」(ノージック『アナーキ ?ー国家?ユートピア』i頁; p.ix)、 と問う。ノージックは適切な国家として、「暴力?盗み?詐欺からの保護、契約の執行などの狭い機能に限定され た最小国家(minimal state)を挙げる。それ以上の拡張国家(extensive state)はすべて、特定のことを行うよう強制され ないという人びとの権利を侵害し、不等であるとみなす(ノージック、前掲書、i頁; p.ix)。 市民の間に分配的正義(distributive justice)を実現?招来するために拡張国家を正当化する主張に対抗するために、 ノージックは、拡張国家を必要としない正義の一理論(権原理論 entitlement theory)を展開し、この理論装置を使っ て、何らかの拡張国家を想定している他の分配的正義の諸理論を解剖し、批判する。そして、特に、ジョン?ロ ールズの強力な理論に批判の焦点を合わせる(ノージック、前掲書、v頁; p.xi)。 (1)リバタリアニズムの特徴づけ ディヴィッド?ボウツによれば、リバタリアニズムの特徴は次の基本概念によって表される。 1)個人主義:リバタリアンは?個人を社会分析の基本単位だと考える。唯一個人だけが選択するのであり、自分 の行動に責任を負う。リバタリアンの思想は?権利と責任の双方を伴う各個人の尊厳を重視する。 2)個人の権利： 個人は道徳的な行為者(moral agent)であるから、その生活、自由、資産(property)について、安全を保証されている という権利を有している。これらの権利は?政府や社会によって与えられるものではなく、人間が生まれながらに してもっているものである。 3)自生的秩序(Spontaneous Order)：社会秩序は、ある個人が自分の目的を達成す るために他の人びとと行動を調整し合うために多くの人びとの行動のなかから自生的に起こる。人間の社会でも っとも重要な制度としての言語、法律、貨幣、そして市場は?中央政府の決定によるのではなく、自生的に発展し た。また市民社会も自生的な秩序である。 4)法の支配(Rule of Law)：リバタリアニズムは、「法の支配の下で人 間の自由をもたらす社会」(society of liberty under law)を提案している。この社会で各個人は他の人びとにも同等の 権利を尊重する限りにおいて?自分の人生をいかようにも生きることができる。法の支配とは、個人が分け隔てな く当然に存在すべき法の規制(legal rules)によって支配されるということであって、恣意的な命令に束縛されると いうことではない。 5)制限された政府：個人は?自分たちの権利を守るために政府を組織する。しかし政府は危 険な制度である。リバタリアンは、権力の集中に大きな反感をもっている。制限された政府(立憲制の政府)は、 リバタリアニズムが認める政治的含意であり、リバタリアンは、世界中の他のどの地域よりも?ヨーロッパにおい て?権力の分散(dispersion of power)こそが個人の自由をもたらし、経済成長を支えてきたのだという歴史的事実を 重視する。 6)自由市場(Free Market)：自由市場は、自由な個人たちの経済システムであり?富を創造するため に必要である。リバタリアンは、人びとの経済上の選択に関する政府の介入が最小限であればあるほど?人びとは、 もっと自由であり、もっと繁栄すると信じている。 7)生産という美徳 8)利益の自然的調和：リバータリアンは、 公平が実現される社会(just society)においては、平和な状態の下で、生産的な人びとの間でそこに生まれる収益に 自然の調和(natural harmony)があると信じている。われわれは自由市