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心理的虐待経験がもたらす心理的悪影響と社会不適応
日本社会病理学会第22回大会 2006/10/1 in 京都府立大学
心理的=情緒的虐待に関する実証的研究――大阪コミュニティ調査報告
立命館大学大学院先端総合学術研究科D2 小宅理沙
gr013037@ce.ritsumei.ac.jp rackychan@
大阪樟蔭女子大学人間科学部人間社会学科 石川義之
はじめに
Ⅰ.心理的虐待の定義
心理的虐待は、child maltreatment(子どもの虐待/不適切な関わり)のうちで最も不鮮明な形態であるとされる。何をもって心理的虐待とするかについては多くの議論や混乱があるからである。
議論の多様性と混乱の中には、「心理的」という言葉の意味が不明確だという点がある。この言葉は加害者の行動についてなのか、被害者に結果として生じる影響についてなのか、意見の一致をみていない。
このことに関して、マクギーとウルフ(McGee Wolfe 1991)は、心理的虐待について専門家たちが力説する複数の視点を説明するための枠組みを提案した。
図1 心理的虐待の概念
出典:Modified from “Psychological Maltreatment : Toward an Operational Definition.”
by R. A. McGee D. A. Wolfe, 1991, Development and Psychopathology, 3 : 3-18.
マクギーとウルフは、この枠組みにおける心理的虐待概念の可能性について、心理的虐待は子どもへの影響よりも親の行動を基に定義すべきだと主張している。本報告でもこのマクギーとウルフの主張に準じて、親の非身体的行動により子どもに身体的/非身体的影響が現れるであろう場合に心理的虐待と把握する定義を採用する。つまり「心理的」という言葉は、子どもへの影響よりも親の行動に適応される。
Ⅱ.心理的虐待の影響
先行研究では、心理的虐待の初期的影響として、人間関係の不適応(友だちとの関係が困難等)、知的な障害(学校の成績の悪さ等)、感情に左右されやすい行動(攻撃性等)などの問題が指摘されている。長期的影響としては、自尊心の低さ、不安、うつ、解離、対人関係における感受性の強さなどが指摘されている(イワニエク 2003)。
Ⅲ.調査統計のための仮説モデル
図2
先行研究では、心理的虐待被害経験後の影響について、心理的損傷と社会的損が入り混じりその影響として語られている傾向にある。しかし、この仮説モデルの特徴はこれらに加え心理的損傷と社会的損傷を分けてモデル化し、心理的虐待被害経験→心理的損傷→社会的損傷この部分の影響に注目する。
1.調査の概要
Ⅰ.調査の目的
近年、社会における「子どもの権利」「子どもの福祉」などが注目されている。マスコミでも児童虐待が大きく取り上げられるなど、子ども時代の経験、家庭における出来事の記憶は、その人の人生に大きな影響を与えるといった考えもあり、子ども時代をどのように過ごしたかが非常に重要であるともいえる。
これらの認識の下、2004年に立命館大学応用人間科学研究科の大学院生(当時)、滋賀大学教育学部の学生(当時)、そして大阪樟蔭女子大学人間科学部の学生(当時)との合同で研究会を立ち上げ、「家庭における子どもの福祉に関するアンケート」を企画した。
本報告では、虐待の中では他のタイプの虐待に付随しているととらえられる傾向にあった心理的虐待に焦点をあて、心理的虐待経験がもたらす心理的損傷と社会的損傷(社会不適応行動)について検討していく。
Ⅱ.アンケート調査について
調査名と質問項目
①アンケート調査の題目…「家庭における子どもの福祉に関するアンケート」である。
②質問項目…また質問紙であるが、質問項目は『外傷後ストレス障害(PTSD)』(中根飛鳥井)」③標本抽出法…無作為抽出法:層化2段抽出法;
大阪市を北部と南部に層化し、第1段階の調査地点のサンプリングとしては、北部からは城東区、南部からは住吉区を選ぶ。この両地区は、人口、年齢別構成比、産業3部門就業割合において関西圏全体のデータに近い値を示している。
第2段階の標本のサンプリングとしては、両地区在住の20歳~29歳(20歳代)の男女からそれぞれ1,000名(男性500名/女性500名)を、選挙人名簿抄本を用いて系統抽出法(等間隔抽出法)によって抽出した。
④調査方法…調査票法(自計式調査票法)による郵送調査法。
⑤調査期間…2004年11月5日~2005年3月1日。
⑥有効回答数(有効回答率)…147名(7.35%)
2.調査結果
性別
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