IEEJ 2014 年2 月掲載 禁無断転載.PDF

IEEJ ：2014 年2 月掲載 禁無断転載 日本：藻類バイオ燃料開発、パイロット段階へ第一歩を踏み出す1 新エネルギー・国際協力支援ユニット 新エネルギーグループ 2 2 昨年11 月、IHI NeoG Algae合同会社 は、油分を大量に含む藻の屋外での100m 規模によ る安定培養に成功したと発表した3。この取組みは屋外の開放型の池で、増殖に必要なエネ ルギー源として太陽光のみを利用し他の藻類や雑菌などに負けない培養方法を開発したも ので、藻を高濃度で安定的に増殖させることができる。同社は次のステップとして、量産 を見据え数千㎡規模での培養を実現するための場所の選定と、さらなるコスト低減に向け たプロセス改良を進めるとしている。 サトウキビやトウモロコシなどのバイオマスを発酵・蒸留して生産されるバイオエタノ ールは、自動車用石油燃料の代替として広く使用されているが、農産物を原料とするバイ オ燃料の増産は食糧との競合問題を生じる。この問題の解決のため、廃材や農業残渣など の木質系バイオマスを原料とする第二世代バイオ燃料の開発が進められているが、未だ研 究開発段階に留まっている。 このような状況下、近年、第三世代バイオ燃料として藻類バイオ燃料の開発が注目され ている。藻類バイオ燃料は油分を大量に含む藻を培養プールで培養し、収穫した藻の濃縮・ 乾燥、油分の抽出、精製工程を経て生産され、航空・自動車燃料として直接使うことがで きる。藻類の大きな特徴は、生産能力がトウモロコシなどのバイオマスに比べて桁違いに 高いことである4。また、農業に不適な土地に培養プールを設置することによって、食糧と の競合問題を避けることができるという利点もある。 日本ではいくつかの大学、企業によって藻類バイオ燃料開発の基礎研究が進められてい 5 6 7」という微細藻類を る。筑波大学 は「ボトリオコッカス 」と「オーランチオキトリウム 1 本稿は経済産業省委託事業「国際エネルギー使用合理化等対策事業 （海外省エネ等動向調査）」の一環と して、日本エネルギー経済研究所がニュースを基にして独自の視点と考察を加えた解説記事です。 2 株式会社IHI、神戸大発ベンチャーの有限会社ジーン・アンド・ジーンテクノロジー(GGT)、および株 式会社ネオ・モルガン研究所(NML)の3 社により、2011 年、藻類バイオ燃料に関する技術開発を目的に 設立。 3 IHI プレスリリース参照 https://www.ihi.co.jp/ihi/all_news/2013/press/2013-11-14/index.html 4 1 ヘクタールの畑から収穫されたトウモロコシで、0.2 キロリットル/年のエタノールが生産できる。これ に対し、1 ヘクタールの広さの培養プールで培養されたある種の微細藻類からは、58～136 キロリットル /年のバイオ燃料が生産できる。 5 http://www.algae-biomass-tsukuba.jp/watanabe-kaya-lab/ 参照 6 ボトリオコッカスは淡水に生息する光合成を行う藻類で、CO2 を吸収して炭化水素オイルを生産する。 1 IEEJ ：2014 年2 月掲載 禁無断転載 使い、ガラス温室内で小型のビーカーから大型ビーカーへ、更に、ビニール温室内の小型 の培養プールへと培養装置のスケールアップを図り、総合的な培養技術の実証試験を行っ ている。本年 4 月には、更にスケールアップして大学周辺の耕作放棄地を利用した大規模 な生産実証試験を実施する予定である。 日本の藻類バイオ燃料開発は小規模な実証パイロット・プラントを建設する段階に入っ たばかりであるが、米国の藻類バイオ燃料開発はエネルギー省(DOE) および農務省(USDA) の強力な支援の基に進められており、既に商業プラント運転実証段階に入ったプロジェク トもある。Sapphire Energy社8 はニューメキシコ州の砂漠地帯に20 エーカーの広さの培