どこでも安定的な通信品質を実現する LTEフェムトセル基.PDF

社会的課題解決に貢献するNECの事業活動特集 信頼性の高い情報通信インフラの構築 どこでも安定的な通信品質を実現する LTEフェムトセル基地局向け干渉制御技術の開発 森田 基樹　信清 貴宏　濱辺 孝二郎 要 旨 モバイル通信サービスには安定的に利用できる信頼性が求められています。モバイル通信のデータトラヒック増加への対策として、屋 外の広い範囲をカバーするマクロセル基地局に加え、屋内の狭い範囲をカバーするフェムトセル基地局を多数設置することが有効です。 本稿では、フェムトセル基地局を高密度に設置しても、マクロセル基地局との電波干渉による通信品質の劣化を抑制する干渉制御技術 として、フェムトセル基地局のデータトラヒックに応じて送信電力を制御し、通信速度を最大化する技術を紹介します。また、フェムト セル基地局の送信電力を個別に制御し、多量のデータを継続的に送受信するヘビーユーザーの影響を最小化する技術も紹介します。 Keyｗords モバイル通信／フェムトセル／マクロセル／電波干渉／送信電力制御／データトラヒック／ヘビーユーザー／LTE に発生し、モバイル通信サービスを安定的に利用できなくな 1. まえがき る可能性があります。このためデータトラヒックが大きく増 モバイル通信サービスは、人々の生活や企業活動に広く 加する将来においても、モバイル通信サービスをどこでも安 利用されるようになり、水道や電気などのライフラインと同 定的に利用できるようにすることは、社会的課題と考えられ 様に重要性が増し、安定的に利用できる信頼性が求められ ます。 るようになっています。そして、近年、モバイル通信の高速・ 本稿では、この社会的課題を解決するために開発した 大容量化を実現するLTE通信の普及が進み、モバイル通信 フェムト基地局の干渉制御技術として、第2章で、データト サービスの利用者（ユーザー）が動画などの多量のデータを ラヒックが大きく増加しても、電波干渉による通信速度の低 送受信するようになり、今後も更なるデータトラヒックの増 下を抑制できる技術を説明します。また、第3章で、多量の 加が予想されています。その対策として、モバイル通信を支 える無線アクセスネットワークにおいては、屋外の広い範囲 をカバーするマクロセル基地局（以下、マクロ基地局）に加 え、屋内の狭い範囲をカバーするフェムトセル基地局（以下、 フェムト基地局）を、多くの人々がモバイル通信サービスを 利用する住居やオフィスなどに設置することが有効と考えら れています。 しかし、データトラヒック増加に備えて、フェムト基地局を 多数設置すると、 のように、高密度に設置したフェムト基 図1 地局の電波が、マクロ基地局の電波と干渉することにより、 場所によっては通信品質（つながりやすさや通信速度）が低 下する可能性があります。また、一部の利用者が多量のデー タを継続的に送受信することで、通信品質の低下が継続的 図1 フェムトセルとマクロセル間の電波干渉 26　　NEC技報／Vol.66 No.1／社会的課題解決に貢