失語症への取り組み ～コミュニケーションの向上を目指.PDF

失語症への取り組み ～コミュニケーションの向上を目指して～ フォレスト垂水 介護福祉士 延命 睦子 １．ホーム概要 開設日 平成１７年１０月１日 ホーム類型 介護付有料老人ホーム（一般型特定施設入居者生活介護） 居室数 １０６室 (介護１０６室) 入居者数 １０３名 (男性 ２７名 女性 ７６名) 平均年齢 ８５.３歳 (男性８５.５歳 女性８５.３歳) 要支援・要介護認定者数 非該当 ５名 要支援 ２２名 要介護 ７６名 （平成２３年５月１０日現在） ２．事例紹介 ≪はじめに≫ 皆さん 自立生活をされていた方が、突然失語症となり自分の想いが伝わらない、 言葉にできない苦悩を想像してみてください。 「失語症」について、 失語症の原因は、主に脳出血・くも膜下出血・脳 梗塞などの脳血管障害によって脳の言語機能の中 枢（言語野）が損傷されることです。 私達は、大脳にある言語中枢で話す内容を考え、 話す時は運動中枢や呼吸筋を使って発音します。 言語中枢と運動中枢の連係がうまくいくことによって、言葉として発することが出 来るのです。 主な「失語症のタイプ」は、 １．運動性失語（ブローカ失語） ２．感覚性失語（ウェルニッケ失語） ３．混合性失語 ４．全失語 大きく分類して4つに分かれます。 これからご紹介させていただきますご入居者は、長く感覚性失語による障害で苦 しんでおられ、ご家族はその様子に「少しでも感情を出して笑顔で過ごして欲しい」 と強く望んでおられました。このご家族の思いを受け止めて、私たちケアスタッフ と言語聴覚士とが連携し、これまでおこなってきました取り組みをご紹介します。 ≪事例紹介≫ Ａ様 ８０歳前半 女性 要介護１ Ａ様は平成１６年に交通事故に遭い、外傷性くも 膜下出血、脳挫傷の為入院、その時の後遺症によ り失語症となりました。退院後、グループホーム に入居されましたが、環境が合わず平成２０年７ 月当施設へ入居となりました。 ≪入居当初≫ 入居当初、スタッフの声掛けにも反応が乏しく、表情は暗くほとんど笑顔が見られ ません。言葉での訴えは難しく、「大丈夫」「分かった。分かった」と発語はある ものの、想いが的確に伝わらずいらだった表情を目にすることも多くありました。 食事の時間にリビングに出てこられる以外は居室で過ごされることが多く、他のご 入居者との関わりを避けておられました。 そこで、日々の生活支援を通じて少しずつスタッフとの関わりを増やし、言葉・身 振り・書字等のあらゆるコミュニケーション手段を用いて他者との交流が図れるよ う、コミュニケーションの向上に取り組みました。 ≪取り組み≫ １．言語聴覚士による訪問リハビリ 言語療法 実施 平成２０年１１月より週１回約４０分間居室 にて実施。 ２．コミュニケーション環境の設定 昨年６月より日々の生活でもスタッフで統一した対応ができるように、次の点に気 を付け「コミュニケーション」環境を設定しました。 ① 待つ 会話ペースを合わせ、伝えようとする考えがまとまるまでお待ちする。 ② 大切な単語を強調し、話しかける 会話を続けていくと、何について話してい るのかわからなくなるので、大切な単語を 強調しながら、短く話しかけます。 ③ 表情を読み取る 会話が理解できたかどうか目の動きによっ て、感情の変化を読み取り進めます。 ④ 身振りや文字の活用 聞いただけでは十分に理解できないことが 多くあり、話しながら時には身振りを加えます。また、その