「その子なりの論理」を活かした小学校国語教育実践を .PDF

「その子なりの論理」を活かした小学校国語教育実践を目指して（1) 一学校における論理療法を援用した実践一 j ，論理療法（REBT），小学校国語教育 キーワード： 「その子なりの論理 広島大学大学院院生春木憂 0. はじめに 1.1. ADHD「 傾向を示す軽度知的障害児に関する 小学校には，様々な児童が存在する。そして，児 事例研究－seIf-esteemの向上に着目してー」 童一人ひとりが様々な論理（以下， 「その子なりの 小西一博・稲垣応顕（2005) 論理」 I）をもっている。 この研究は， ADHD （注意欠陥多動性障害）傾向 その論理の存在に気づかずに，表出される記述や を示す軽度知的障害児のself-esteem2を高めることを 言動，行動にとらわれることによって，児童理解や 目的に，特別支援学校において日常生活全体を面接 指導，評価，対応等のかかわり方を誤ることも多い。 場面とみなしたチャンス面接3を継続的に行った結 小学校教員である筆者が，様々な児童とのかかわり 果を分析したものである。実践の際に，論理療法 を深める過程で，児童が内在させている「その子な (ABC理論）を参考にしている。研究目的は， ADHD りの論理jの存在に気づかされたのである。そこで， 傾向を示す軽度知的障害児の self-esteemを高めるた 児童の言動や行動等を観察し，それぞれの背景を把 めに，認知的アプローチによる学校カウンセリング 握したうえで「その子なりの論理Jを理解するよう の効果について検討するものである。また，教育実 に努めることによって，児童理解がより正確なもの 践による事例分析から， ADHD傾向を示す子どもへ となり，彼らに必要な手立てを見出すことができる の効果的な教育方法を検討しようと試みている。 のではなし、かと考えるに至ったのである。 1.2. 「セルフ・エスティームの低下を防ぐため この問題意識に基づいて，現在「『その子なりの の授業の効果に関する研究ーネガティブな事象に 論理』を活かした小学校国語教育実践の理論と実際j 対する自己否定的な認知への反駁の促進一J （以下，本研究）をテーマに，研究を進めている。 川井栄治・吉田寿夫・宮元博章・山中一英（2006) これまで，本研究における「その子なりの論理」 ネガティブな事象に対する認知パタンが自己否定 の実態調査及び分析，実践理論の在り方を模索する 的なものに固定化し，それに伴って自己効力感やセ 過程として，論理療法についての文献研究及び事例 ルフ・エスティームが低下することを防ぐための授 研究を進めてきた。ここで，学校現場における児童 業を考案して，それを小学校高学年の児童に対して に関わる研究のうち論理療法を援用した 5つの文献 学級単位で実施し，その効果について多面的な検討 を対象に，実践や分析の方法等について考察する。 1.各研究の概要 2 中園 (1995）や佐野 (1995）によれば， 本稿で対象とする 5つの文献は，各種学校におけ self-esteemとは， 「自尊感情」と訳され，吉津 (2000）に「自分自身のさまざまな側面に向けら る児童生徒を対象とした実践研究のうち論理療法を れた自己評価とそれにともな