事務ミス対策の高度化とリスク管理报告.pdfVIP

事務ミス対策の高度化とリスク管理 業務品質改善の2つのアプローチ 背景 ることで、それ以外には意識が行かなくなったり、一つの手 内部統制（J-SOX）やオペレーショナル・リスク管理体勢 続きにダブルチェック、トリプルチェックとチェックが重なり、 を整備したものの、事務ミスが思うように減少しない金融 自分が見なくても大丈夫だろう、といった気の緩みを引き 機関も少なくありません。これは事務ミス対策が有効に機 起こすようなミスの温床になってしまう可能性もあります。 能していないことが考えられます。また、昨今では事後対 このような対応では、根本的に事務ミスの減少は難しいで 応的な事務ミス対策とあわせて、未然予防としてのリスク しょう。 管理の重要性が高まってきています。このような状況下 で、事務ミス対策を高度化するとともに、リスク管理との連 事実認識の範囲 携・調和を検討する必要がでてきています。 事務ミス対策の重要なポイントの一つに事実認識があり ます。これは、事故の起きる直前の数分間に何が起きた 事務ミス対策の失敗 か、事故直後にどのような行動をとったか、のみならず、事 事務ミスの事故報告書やニアミス（ヒヤリハット）報告書 故の数日前から変わったことはなかったか、またチームの 等をレビューすると、多くの金融機関で一定の傾向が見ら 状況や職場環境についても注意する必要があります。どう れます。まず、事故の原因分析が不十分のまま、取り急ぎ しても事故当時のことに意識が向いてしまいますが、その 場当たり的に再発防止策を策定してしまう「表面的な対 数日前から事故を起こす要因があったのかもしれません 応」の傾向があります。本質的な要因まで原因分析が至っ し、通常とはちがう状況に追い込まれていたのでミスが起 ていないので、類似の事故が再発するかもしれません。ま きてしまったのかもしれないのです。表面的に状況を把握 た、「以後注意する」「徹底する」といった精神論による対応 するのではなく、俯瞰的に状況を把握しておくのです。重 の傾向もあります。これまでも注意をしていなかったわけで 要なポイントを取りこぼした事実認識では原因分析をミス はないのですから、これでは実質的には何も対応しないこ リードすることになってしまい、対策を講じても効果が期待 とと同じです。そして、機械的に内部統制を強化する統制 できません。その意味で、事実認識は慎重に総合的に実 の重層化の傾向があります。何でもチェックリストを作成す 施すべきです。 原因分析 業負荷が高まっているかもしれません。また、人員配置も 原因分析も重要な事務ミス対策のプロセスの一つです。 従来から減員していたり、作業者も正社員から経験の乏し 短絡的に直接要因から対応策を検討するのではなく、事 いパートや派遣社員に変更していたり、スキルが低下して 故の発生した要因を根本要因まで掘り下げる必要があり いる可能性もあります。OG ・OBをパートや嘱託社員として ます。原因はいかにも明白のように見えても、詳細に調べ 採用する場合でも、スキルはあるものの最近の制度改正 ると異なる要因がキーになっていた、ということがあるため や規定の変更に気づかずに従前の手続きを実施して事務 です。直感的なあて推量や思い込みではなく、秩序整然と ミスとなるケースもあります。その意味では、事務リスクは 論理的に分析しなければなりません。 増加していると考えられます。 原因分析には「なぜなぜ分析」等の手法が使われたりし