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生存時間分析と生命表 疫学と予防医学 平成20年4月23日(中村) 臨床医療における関心の対象（研究対象） 関心の対象が，ある事象が起こるまでに経過する時間の長さである場合がある． １）特定の疾病による死亡までの経過時間(elapsed time to death) ２）危険に暴露された就労者の集団について，非暴露群との死亡率の比較(職業別死亡率，occupational mortality) などと云った類の議論を， ?疾病の病理病態情報に関するデータ ?治療の方法に関するデータ をもとにして解析することは，生存時間分析(survival analysis)と呼ばれる． 研究（調査）－研究への参入/打切り/終了－ 予後の良くない悪性腫瘍の治療のための臨床試験の多くは，死亡または腫瘍の縮小が試験の終了点となる． この種の研究では，関心をおく事象(死亡，腫瘍の縮小)が分析時点では未だ起こっていない個体(集団の構成員；患者)が含まれる．このような個体(患者)については，関心をおく事象までの時間は未知(何時起るか不明)であるが，現在までの生存時間を上回ることは当然(既知)なので，その値(事象の発生時刻)に対する何らかの情報が存在する筈であり，分析はこの何らかの情報に関するものである． 個体が試験の終了点を迎えたような観測値は，途中打ち切り値(censored value; ‘censor’とは「検閲を受ける/検閲して削除する」「検閲官」の意味)と云われる．換言すると，生存時間分析に用いられるデータには，途中打ち切りに対処できるようなデータでなければならない． 臨床研究での関心の対象となる変数は，予後因子(prognostic factor)であり，この種の分析には，研究対象の集団の予後に関する変数(prognostic variables)の取扱いが考慮される必要がある． 期待死亡率観測死亡率と時間要因 職業別死亡率(occupational mortality)の研究では，調査対象が疾病に患ってから参入する臨床試験とは対照的に，健康である対象(個体)も研究に参入する．このため，研究対象群を含む母集団と同様の死亡率を持つと考えたときの，1)期待死亡率と時間原因，2)観測死亡率と時間要因の両方からの比較(統計学的比較)をするのが一般的な方法となる． 分析方法の多くは生命表に基づいているので，生命表について，整理する． １．生命表 http://www.mis.med.akita-u.ac.jp/~nakamura/LifeTable/ 上記のURLに一連のWeb Pageの資料が掲載されている．（擬似国試問題と説明を含む） H18年度簡易生命表(女性)一部 H18年度簡易生命表(男性)一部 年齢 生存数 死亡数 平均余命 生存数 死亡数 平均余命 x lx ndx ex lx ndx ex 週齢 0 100000 91 85.81 100000 101 79.00 1 99909 13 85.87 99899 17 79.06 2 99895 11 85.86 99882 12 79.05 3 99884 9 85.85 99870 10 79.04 4 99875 25 85.84 99860 30 79.03 月齢 2 99850 19 85.77 99830 19 78.97 3 99830 39 85.70 99811 43 78.90 6 99791 39 85.49 99768 49 78.68 年齢 0 100000 248 85.81 100000 280 79.00 1 99752 36 85.02 99720 41 78.22 Edmond Halley (1656-1742)が最初の生命表(Life Table)を作成． 補足：Halleyの生命表 Royal Society of London (1660; Charles II)が設立時に4歳． 1673(17歳)年にOxfordのQueen’s Collegeに入学．John Flamsteedに師事して天文学を修める． 1678(22歳)年にCharles IIの仲介でFellow of Royal Societyになる． 1684(28歳)年にSir Isaac Newton (1642-1727)と出会い，Newtonの重力理論の発展に寄与した． 註：HalleyとNewtonの双方は天体の動きに機械的な説明を試みようとしていた．NewtonのPrincipiaの出版(1687)はHalleyとHooke (1635-1703; Hookeの法則，顕微鏡の開発)の手助けもあり実現する． In 1686(30歳