平成21年度病害虫発生予察特殊报第1号.PDFVIP

平成２１年度病害虫発生予察特殊報第１号 平成２１年４月１３日 愛 知 県 １ 病害虫名：ナスすす斑病 （Pseudocercospora fuligena (Roldan)Deighton ） ２ 対象作物：ナス ３ 発生地域：県内全域 ４ 発生確認の経過 平成19年10月、尾張地域の施設栽培ナスですすかび病に酷似した病害が見つかった。 葉表の症状はすすかび病に酷似していたが、葉裏の菌叢はすすかび病と異なり不明瞭で あった。 農業総合試験場環境基盤研究部病害虫防除グループにおいて病斑上に形成された胞子 を顕微鏡下で観察したところ、広義Cercospora属と思われる分生子を確認し、病徴から、 既報告のCercosporasp. によるナスすす斑病と診断した。また、この菌を三重大学大 学院生物資源学研究科中島千晴准教授に同定依頼したところ、 ena (Roldan)Deightonと同定され、この菌がナスすす斑病菌と再同定された。 ナスすす斑病は、昭和46年に埼玉県での初発生が報告され、その後も同県内での発生 はあったものの、他県での特殊報による発生報告はない。本県では初確認である。平成 21年３月末現在、県内全域（７市）で発生を確認している。 ５ 病徴 葉に発生する。初め黄色、円形の小斑点を生じ、のち周縁部は黄色、内部は淡褐色～ 褐色、円形病斑を形成する。病斑の裏面には灰褐色、すす状のかびを生ずる。 病徴はすすかび病に酷似するが、葉裏の菌叢は、すすかび病が灰褐色ビロード状に分 生子を密生するのに比べ、すす斑病の方が、まばらである。また、進行した病斑では、 すす斑病の方が葉表の黄色味が強い。なお、発病初期及び薬剤散布等により病勢が収ま った状態では、両病害の肉眼での区別は困難である。 ６ 病原菌と伝染 糸状菌の一種で、不完全菌類に属し、分生子のみを生ずる。分生子は半透明～淡いオ リーブ色、初期には油胞を有し、大きさ30～143×2.5～6.0μｍ、3～13隔壁を有する。 ナスのほか台木用ヒラナスが罹病する。 本菌は病葉上または組織内で越年し、分生子を生じて伝染する。発病には24～28℃の 高温、多湿条件が適している。したがってハウスの換気不良、潅水過多、うね間潅水を 行っているところで発生が多い傾向がある。 なお、病原菌であるPseudocercospora fuligena び病菌と同一菌であり、ナス、トマト相互に感染可能であることが確認されている。 ７ その他 同一ほ場でのナスすすかび病との混発や、両病害による病斑が同一ナス葉上で形成さ れた事例を確認している。 ８ 防除対策 施設栽培では、密植、過繁茂、換気不足で発生しやすいので、多湿にならないように 管理する。 発病葉、被害残さは施設外に持ち出し、適切に処分する。 ９ 連絡先 農業総合試験場環境基盤研究部病害虫防除グループ 電話：0561-62-0085 （内線471 ） ナスすす斑病（左）とナスすすかび病（右）の比較 図１ ナスすす斑病の発病葉 図２ ナスすすかび病の発病葉 図３ ナスすす斑病の病斑（葉表） 図４ ナスすすかび病の病斑（葉表） 図５ ナスすす斑病の病斑（葉裏） 図６ ナスすすかび病の病斑（葉裏） 図７ ナスすす斑病の分生子 図８ ナスすすかび病の分生子 （×200 、1 目盛＝約5 μm ） （× 200 、1 目盛＝約5 μm ）