特集 吸收不良症候群と蛋白漏出性胃肠症 - j-stage journals.pdf

特集●吸収不良症候群と蛋白漏出性胃腸症 ピックス 吸収不良症候群と蛋白漏出性胃腸症 ト VIII. 蛋白漏出性胃腸症 福田 真作 吉田 豊 要 旨 蛋白漏出性胃腸症は,低 蛋白血症を主徴とする一種の症候群である.検 査法(と くにα1- antitrypsin clearance試 験)の 普及によりその原疾患は極めて多彩となつてきた.最 近では膠 原病(と くに全身性エリテマトーデス),ア レルギー性胃腸症による蛋白漏出性胃腸症の報告の 増加が目立つ.治 療は原疾患の治療に加えて,そ れぞれの病態に即した食事(栄 養)療 法,薬 物療法,外 科治療が行われる. 〔日内会誌 85:1098～1103,1996〕 Key words:低 蛋 白血症,蛋 白漏 出性 胃腸症,α 、-antitrypsin clearance試 験 までの文献報告の集計では,炎 症性腸疾患の報告 は じめに が減少しアレルギー性胃腸症や膠原病(特 に全身 性エリテマトーデス)で の報告が増えている.炎 蛋白漏出性胃腸症(protein-losing gastroentero-症性腸疾患では高頻度に蛋白漏出を合併するにも pathy,以 下本症)は 低蛋白血症を主徴 とし,消 化かかわらず報告例が減少した原因としては,α1- 管(胃 あるいは腸)か ら胃腸管腔へ血漿蛋白(特 にアルブミン)が 異常漏出する一種の症候群であ 蛋白漏出の検査が一般化したためと考えられる. る.こ こではその一般的な特徴,診 断 ・治療にお また,特 殊なものとして欧米で後天性免疫不全症 ける最近の話題および蛋白漏出をきたす代表的な 候群に合併した小腸Kaposi肉 腫が注目される. 疾患について述べる. 2.病 因 1.分 類,頻 度 胃腸管からの蛋白漏出の機序についてはいまだ 本症の原疾患は極めて多彩で,消 化管疾患を主 不明な点が多く,①腸リンパ系の異常(腸 リンパ 体 として心疾患や膠原病などの全身性疾患などが 管拡張症,Whipple病,悪 性リンパ腫,後腹膜線維 あげられる.原 発性腸 リンパ管拡張症,Menetrier症)② 毛細血管透過性の亢進(ア レルギー性胃腸 病 を原発性 に,他 を続発性 とする分類が用いられ 症,膠 原病)③ 胃腸粘膜上皮の異常(炎症,潰 瘍, てきたが,最 近では臓器別分類がよく用いられる 癌)④局所線溶の亢進(Menetrier病,び らん性胃 (表). 炎)の4つ の機序が単独あるいは複数関与して漏 本邦における疾患別頻度は,原 発性腸 リンパ管 出,低 蛋白血症を呈すると考えられてきた.最 近 では,自 己免疫的機序を疑わせる症例や, 拡張症,Menetrier病,心 疾患,非 特異性小腸潰瘍, 消化管ポリポーシス,Crohn病,腸 結核などが多 かったが,著 者 らが最近行った1978年 から1990年性胃炎やMenetrier病 の報告がみられ興味深い. ふ くだ しんさく,よ しだ ゆたか:弘 前大学医学部 第一内科 日本内科学会雑誌 第85巻 第7号 ・平成8年7月10日 (80)