国民体力法.PDFVIP

TBアーカイヴ 国 民 体力 法 結核予防会 顧問　島尾 忠男 制定までの経緯 葉が削られた理由として，「管理は主として物を対象 国民体力法は昭和 15 年に制定された法律で，「体 に用いられる言葉であり，最近人を相手にも乱用され 力」には「體力」という字が用いられていたが，以下 ているが…」という議論が行われていて，興味深い。 の記載では国民体力法と記載する。この法律は，当時 日支事変中で，体力の優れた若者の確保が重要な中で， 同法実施の状況 逆に徴兵検査での壮丁の体力がむしろ低下傾向を示し， 体力検査を受けるべきものの範囲は当分の間内務大 結核患者も多く見られることから，結核を予防し，青 臣が定めることになっており，昭和 15 年度には予算 少年の体力の向上を目指して制定された。 250 万円で 17－19 歳の男子 230 万人が対象となった。 制定までの経緯は，昭和 11 年 6 月に当時の寺内陸 昭和 16 年度には 15－19 歳の男子が対象になり 290 万 軍大臣が閣議の席で国民体力向上の必要性を強調し， 人に検査が実施され，ツ反応陽性率は 30.1％であった。 政府は同年 11 月に日本学術振興会に諮問，振興会は 昭和 17 年 2 月には同法の改正案が議会を通過し，5 「国民体力に関する小委員会」を設置して，翌 12 年 5 月 1 日から改正法と施行令，施行規則が公布された。 月に国民体力管理法の制定を建議した。これと相前後 改正された主な内容は，対象が 25 歳の男子まで拡大 して，内務大臣は日本医師会にも同様な諮問を行い， され，ツ反応陽性者，疑陽性者には当時実施可能になっ 日本医師会は昭和 12 年 11 月に国民体位現状改善方策 ていたＸ線間接撮影による検査を行うことであった。 を答申した。 国民体力法による検査を受けた者には，その成績を 昭和 13 年 1 月に内務省から分離して，国民の健康 記入した体力手帳が交付された。（写真） を主管する官庁として厚生省が独立し，体力局がこ の問題を主管することになり，昭和 13 年の 7 月から 写真に示したのは，筆者自身の体力手帳である。昭 8 月にかけて予備調査を行っている。商工地域の代表 和 16 年 5 月，当時旧制中学 5 年生で，年齢 17 歳（当 として東京と大阪，純農村として埼玉，農山村として 時は数え年）に達していたので，法に該当し，昭和 秋田，漁村として愛媛，結核多発地域として石川，壮 16 年 5 月に検査を受けた。身長，体重，胸囲，視力， 丁の体位の良い地域として静岡と福岡の各府県から 聴力のほかにツ反応検査も行われ，疑陽性であった。 各 3 カ村の 1, 2, 4, 8, 12, 16, 19 歳の男女について，身 ツ反応の次の「機能」という欄は，長さ 9.2m，幅 5.2 体計測，運動機能，知能，疾病異常の調査を行い，当 ｍの長方円形のトラックを，25kg の俵を担いで走り， 時未だ研究段階であったツベルクリン皮内反応検査も 30 秒間に何回廻れたかという数字で示してあり，筆 実施した。この成績を解析し，法を制定するために同 者の成績は 4 回 3/4 廻れたことを示している。