鱼病対策研究.PDFVIP

魚病対策研究 湯浅明彦 　魚介類のへい死や異常を診断し，原因の究明と感染症の 　免疫賦活剤による細菌性冷水病の予防 治療法や防除法について調査研究を行う。養殖場等で利用 　アユの放流用種苗の中間育成施設で，免疫賦活剤の投与 できる簡易な魚病診断法や診断器材を開発する。アユの養 による細菌性冷水病の予防対策を実施した。自然免疫応用 殖場や放流用種苗の中間育成施設で，魚病感染症の予防対 技研株式会社（高松市）から譲渡を受けた小麦発酵抽出物 策を実施する。 （商品名：Somacy-SL100）を，免疫賦活剤として使用し た。同剤は平成17年に当時の水産研究所でアユの出血性腹 水症に対する予防効果が確認され，その後飼料添加物とし 方法 て登録された。1日に魚体重1kg当たり20μgを4日間与え 　魚病診断 て3日間休む間欠投与法で感染症の予防効果が期待でき 　養殖業関係者から依頼された検体を診断した。河川等で る。平成25年2月に細菌性冷水病を発病した中間育成場 コイヘルペスウイルス病（略称KHV）の発病が疑われた場 で，アユ種苗を搬入した平成26年1月から免疫賦活剤を投 合は，現地に出向いて状況を把握し検体を採取した。水産 与した。1週間単位の給餌表を作成し，一定量のSomacy- 研究課美波庁舎病理研究室で，検体の外部症状と死亡状況 SL100を添加した配合餌料を4日間給餌し，3日間は無添加 等を勘案して必要な検査を実施した。 の配合餌料を給餌するようにした。Somacy-SL100の添加 量(g)は次式で計算できるが，有効成分投与量（一日魚体 　薬剤感受性判定器材の実用化 4 重当たり20μg）と有効成分濃度（10 ppm）が一定なの 　ブリ類の類結節症原因菌の薬剤感受性検査の簡易キット で，給餌量(kg)と給餌率（魚体重当たりの給餌量の割合 （写真1）を試作した。同キットは，ペニシリンGカリウム ％）で決まる。 溶液，リン酸緩衝液，ヨウ素液の反応試薬で構成される。 同キットは罹患魚の臓器を試料として，類結節症原因菌が 酵素（βラクタマーゼ）を産生するアンピシリン耐性菌で また，冷水病の感染をモニターするために，飼育水中の あるかどうかを，ヨードメトリック法で判定することがで 同病原因菌の検査を3回実施した。飼育用水又は排水1Lを きる。 孔径0.33μmのメンブランフィルターで吸引濾過し，濾過 後のフィルターからDNAを抽出した。抽出したDNA溶液 で，冷水病原因菌PPIC遺伝子を標的とするPCR検査を実施 した。 結果と考察