甲殻类 - 冲縄県.PDF

甲殻類 ３．８ 甲殻類 今回の見直し（改訂第３版）に掲載される種は以下のとおりである。 カテゴリー 絶滅 野生 絶 滅 危 惧 Ⅰ 類 絶滅危惧 準絶滅 絶滅のおそれの 情報 合 計 (EX) 絶滅 Ⅱ類 危惧 ある地域個体群 不足 分類群 ⅠＡ類 ⅠＢ類 (EW) (CR) (EN) (VU) (NT) (LP) (DD) 初版 1996 0 3 － － 8 46 1 0 58 改訂第2版 2005 0 0 17 5 12 23 32 0 4 76 改訂第3版 2017 0 0 21 7 14 29 68 0 19 137 ※初版のカテゴリーのうち、絶滅種は現行のカテゴリー名の絶滅と野生絶滅を集約することで示し、このほか絶滅危惧種 は絶滅危惧Ⅰ類、危急種は絶滅危惧Ⅱ類、希少種は準絶滅危惧、地域個体群は絶滅のおそれのある地域個体群、未決 定種は情報不足として現行のカテゴリー名に変換して示した。 (１) 本改訂でのおもな留意点 甲殻類は非常に多様化し、様々な環境に進出したグループである。沖縄県内における多様な甲殻類の生息状況 をより良く把握する為に、野外での調査を普段から多く行っている、甲殻類に詳しい7名で分科会を組織した。 沖縄県の十脚目を中心とする甲殻類相の情報は、前回改訂版が発行された 2005 年から比べると飛躍的に増加して いる。本改訂では、前回改訂版に掲載された種に加え、前回改訂で掲載されなかった種、新たに新種記載された り県内での分布が判明した種も含めて、掲載候補種を選定した。その後、掲載候補種各種の現況を分科会委員の あいだで共有しつつ、絶滅の危険性を検討し、掲載の可否及びランクの決定をした。 本改訂版での掲載種は、前回改訂に比べて61種増えて137種に上った。この増加は研究の進展によるところが 大きく、絶滅の可能性が高い種が急激に増加したとは言えない半面、各種の生息環境が向上しているとも言えず、 沖縄県内における甲殻類の絶滅のリスクが高い種が多いことをより良く示す結果となった。沖縄県は多様である がそれぞれの規模は小さな環境がモザイク状に分布する島嶼の集合であり、例えランクが低い種であっても絶滅 の可能性が急激に高まったり、多くの種が生息する環境が容易に悪化する可能性があることにも留意して頂きた い。 (２) 本改訂で明らかになったこと 本改訂版での掲載種は、前回改訂に比べて61種増えて137種と大幅に増加した。これは、沖縄県における十脚 目を中心とする甲殻類相の研究の飛躍的な進展が大きな理由の一つである。前改訂からのランクの変更は、上昇 したのが3種で、下降が20種、リストから除外されたのが14種であった。これら変化の要因として、調査研究 の結果、新たな生息場所が発見されたなど、知見の増加によるところが大きい。一方、各ランクの構成種数はす べてのランクで増えた。絶滅危惧IA類 (CR)とIB類 (EN)に新たに加えられた甲殻類は、慶良間諸島や久米島固 有のサワガニ類、かつて県内の4島に分布するとされたGeothelphusa levicervix が島ごとに別種に分けられた オオサワガニ類 3種に加え、地下水域に生息するダイトウコオイエビやドウクツモクズガニ、などである。絶滅 危惧Ⅱ類 (VU)と準絶滅危惧 (NT) に新たに加えられた甲殻類は、干潟やマングローブ、汽水域などに生息する 様々な分類群に属する種がほとんどであった。このように、全体でみると絶滅の可能性が高い種の生息環境は、 陸上から淡水、汽水域と様々な環境に渡っており、沖縄県の生物多様性の保全対策には、個々の種や環境への対 応はもちろん、さらなる総合的な対策も必要であることが分かる。 執筆者 成瀬 貫（琉球大学熱