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　ＪＯＩＮ広島　会報　 ２００3年12月 　会長からのメッセ－ジ 11月移動例会報告　（１１月１５日） 日 渉 園 見 学 会　　片 岡 勝子 日渉園は寛政10年（1798年）、浅野藩藩医である後藤松岷(1755~1828)が沼田郡新庄村（当時）に開園した薬草園で、明治4年（187１年）に廃園になり、さらに原爆の被害にあって荒廃したが、中心部の庭園は、日本庭園として後藤一枝さん、智枝さん母子が守ってこられた。現在は、三滝の住宅地のなかにこんもりとした林と新築の四阿が太田川沿いからよく見える。  園の中心には住居と庭園があり、周囲には薬草地が広がっていた。薬草地は西側が約7,300㎡の乾燥地帯、東側が1,500㎡の湿潤地帯で、それぞれに適した薬草を栽培していた。庭園は上下2段からなって石橋で結ばれており、上段には現在は涸れた池とそこに架かる太鼓橋、「神農堂」の礎石と台座等が残っている。下段には薬草の研究や薬の調合等を行っていた「四阿」と「薬室」の礎石の一部の他、涸れた池や眼鏡橋などがあった。日渉園には浅野藩侯なども来園されたようで、浅野長勲公や頼 杏平が来園の折に認めた書も後藤家に伝えられていた（現在は広島大学医学部医学資料館所蔵）。この庭園部分（1,391.99㎡）が日渉園跡として広島市史跡に指定（平成6年3月25日）され、平成12年3月、故後藤宣夫氏の遺志により後藤 新氏から広島大学（原田康夫学長）に寄贈された。 広島大学は、まず、フローラの調査（関 太郎 名誉教授、神田博史助教授；計205種を確認）、薬草の調査（神田博史助教授；計63種を確認）、発掘調査を行い、防災、樹木の剪定、史跡保護のための苑路整備、境界柵の設置など、必要最低限の庭園の整備を行った。さらに原田前学長の御尽力により、旧四阿?薬室のあった部分に外観の似た茶室「日渉庵」が建築された（山根木材、川崎誠一棟梁、広仁会）。 日渉園外観 日渉園の植物として注目すべきものはコウヨウザン、オガタマノキ、ボダイジュである。コウヨウザンは中国及び台湾に自生するもので、徳川時代に移入されたとされている（香油用）。オガタマノキは、伊豆以西の本州太平洋岸、伊豆七島、四国、九州、琉球に自生する。神社に植えられることが多く、厳島神社や縮景園にも見られる（葉より香料をとる）。ボダイジュは中国原産といわれるが、渡来の時期は不明で概ね寺院に植えられる（花は薬用、果は念珠材）。草本で注目すべきものはオランダハッカやツルマオなどである。オランダハッカは欧州及び北米原産で、文政年間（1918~29）に宇田川玄真が取り寄せ、明治期に再輸入された。ツルマオは本州（静岡と中国；両者はかなり違う）九州南部から東南アジアにかけて分布しており、本州のものは輸入植物の疑いがある。三滝付近では戦前から異常な繁茂をしており、日渉園と無関係ではないと思われる。 日渉園と高野長英の関係は有名である（吉村 昭 「長英逃亡」、「日本医人伝」）。後藤松軒（1863~1864; 山県郡筒賀村の森家に生れ、後藤松岷の養嗣子となった）は長崎の吉雄塾で長英と同門、同年で親交があった。幕府に追われる身となった長英を日渉園の神農堂にかくまっていたことが露見し、8年間、禄を停止されたと伝えられている。松軒は長茄子の栽培を広島に導入したり、長芝の堤防にゲンノショウコの種を播いて、その薬効を広めたとされている。 お茶室 JOIN広島では、１１月１５日（土曜日）午後、川崎棟梁の説明で日渉園見学会を開催した。四阿の天井は高台寺の傘亭にヒントを得たもの、また、お茶室は利休好みの４畳半で、にじり口はなく、貴人口を通って入るようになっている。天井は利休時代の高さとかで、現代人にはずいぶん低く感じる。和風建築は本来、礎石の上に柱を立てるのであるが、建築基準法の関係でコンクリートの基礎をうち、鉄筋を礎石と柱の真ん中に通してあるという。旧四阿の屋根は茅葺き、旧薬室は瓦葺きであったが、新しい建物はどちらも銅葺きである。また、旧四阿には蔀戸がついていたことが写真からわかるが、そのかわりに周囲に雨戸を巡らすようになっている。床柱にするようなしぼのある丸太を２６本も使った贅沢なお茶室で、採算を度外視して後世に残るものにしたいという山根木材さんと川崎棟梁の意気込みがうかがえる。 見学後には平和公園に近いイタリア料理店マリオで夕食、話がはずんで楽しい午後を過した。 JOIN広島News いよいよ今年も暮れようとしています。みなさまの2003年はいかがでしたでしょうか？　事務局もいろいろ行き届かないことばかりでしたが、会長のメッセ－ジにありますように来年度は、運営改善を重ねて力強いJOIN広島を作っていければと願っています