当直-ships.PDF

当　直 　潜水艦は航海，停泊を問わず水上艦よりも厳しく即応 てみよう。 体制が敷かれている。そのため当直も特殊な勤務になっ 　通信特技職の乗組員もおおむね同じで，階級や経験年 ていて，停泊中といえどもいつでも短時間内に出港でき 数をもとにチーム編成された各直には最上級者を直長 る態勢にある。 （リーダー）として当直に立つ。 　通常の訓練航海中の勤務を紹介してみよう。 　「♪朝だ～夜明けだ～潮の息吹き～」という軍歌「艦 　通常航海といっても潜水艦は出航したら常時哨戒（厳 隊勤務」の文言は水上艦の場合であって，潜水艦では朝 重な見張りの意）配備である。艦長は24時間当直して も夜明けも区別がつかない“日陰者”集団だから，「時間」 いるような態勢にあるが，幹部はそれぞれ職種と職務に は分かっても「朝夕」の感覚がないことだろう。行動中 応じた部署での当直制となる。 はいつも昼でも夜でもないから，夜は艦内の赤灯で夜だ 　一般科員（海曹士）の当直は，それぞれの職域（魚雷， と分かるくらいのことである。赤灯のもとで食べる食事 航海，水測，通信，電側，電整，機械，電機の各専門員） は夕食であることを意味する。 が３交代制で設定され，チーム編成により１直，２直， 　そういう雰囲気の中での当直だから，やはりすべてが ３直に分けて６時間ごと（状況に応じて４時間ごと）に 普通のようにはいかない。潜水艦での「当直」がどのよ 入れ替わるというシステムである。各直はさらにABC うな意味を持つ任務であるか，自分の持ち場以外にも及 ……に分かれるが，複雑になるのでここでは省略する。 ぶ責任感は他の社会にはない高いものがあるのではない 　６時間当直の場合の第１直の当直に立った魚雷員を例 だろうか。 にとると，午前８時に自分の持ち場の発令所で操舵や関 　機関科員も主機（エンジン）と電気に分かれてそれぞ 係記録の任務に就き，午後２時に非番となって２直員と れの当直に立つ。潜水艦の主動力は電池なので，機械員 交替する。交替した２直員は午後８時まで同じ勤務に就 も水上艦のようにあちこちで機械の調子を調整したりし き，３直員と交替，３直員は引き続き午後８時から午前 なくていいが，楽だということではない。見落しがない ２時まで当直し，ここで再び１直員と交替するというこ ようにダブルチェックも行なう。電機員も１時間ごとに とになる。１直員は最初（どこを最初とするか説明がむ バッテリー関連機器の数値を記録する。 ずかしいが）午前８時に立直したが，次の立直時刻は午 　補給科員と衛生科員は同じ潜水艦特技を認定されては 前２時ということになり，当直時間は６時間ごとにずれ いても勤務態様が違うのは任務の内容から当然のことで てくるから不公平がない。 あるが，付記しておこう。 　一般国民の目につかないところで，日夜このような任 　補給科・衛生科（４分隊）は経理員，補給員，給養員， 務に就いている国家公務員（隊員）がいることを知って 衛生員から成るが，航海中，特に４分隊の業務で忙しい もらうことも大事である。実際にどのような当直任務に のは食事づくりである。給養員は同じ３直制ではあるが， あたっているのか，そのへんのことは呉の海上自衛隊史 人数も少なく仕事の中身が違うので，この場合の３チー 料館「てつのくじら館」内に分かりやすくパネルで公開 ム分けは前記の