酵母の简便な培养法と教材化の检讨.pdf

    Title 酵母の簡便な培養法と教材化の検討 Author(s)岩井, 草介; 菊池, 智子; 三浦, 貴士 Citation弘前大学教育学部紀要. 110, 2013, p.23-29 Issue Date2013-10-18 URL /10129/5088 Rights Text versionpublisher 　 　 弘前大学教育学部紀要　第110号：23～29 （2013年10月） 23 Bull. Fac. Educ. Hirosaki Univ. 110：23～29 （Oct. 2013） 酵母の簡便な培養法と教材化の検討 Simple Culturing Methods for Yeast and Teaching Experiments ＊ ＊ ＊ 岩井　草介 ・菊池　智子 ・三浦　貴士 ＊ ＊ ＊ Sosuke IWAI ・Tomoko KIKUCHI ・Takashi MIURA 要　旨 　出芽酵母は、増殖が速く、増殖期にある細胞では無性生殖の１つである出芽の観察も容易なため、学校で簡単に 培養することができれば実験教材としての幅広い活用が期待できる。そこで本研究では、身近にある材料を使っ て簡便に酵母を培養する方法を検討した。その結果、糖および園芸用液体肥料を成分とする液体培地で、市販のド ライイーストの酵母が増殖することを見出した。培養液中の酵母を顕微鏡で観察したところ、出芽中の細胞が多数 見られた。また上の成分のいずれかを欠いた培地ではほとんど増殖しなかったことから、酵母の増殖には炭素源と、 窒素 ・リン・ビタミン類 ・無機塩類などの炭素源以外の栄養素の両方が必要であることが確かめられた。この実験 は、生物の増殖に必要な栄養素や生物を構成する元素についての理解につながると考えられる。さらに、糖 ・ブイ ヨン・粉寒天を成分とする寒天培地で酵母が増殖することも見出した。 キーワード ：出芽酵母　培地　増殖　無性生殖　世代時間 　真核生物としては増殖が速く （倍増時間 （世代時 １．はじめに 間）が約３時間4））、増殖期にある細胞は分裂 （出芽） 　出芽酵母Saccharomyces cerevisiae （以降は単に酵母 の観察も容易であるため、学校で簡単に培養して増殖 と呼ぶ）は、高校の生物ではよくアルコール発酵の実 させることができれば、アルコール発酵以外にも実験 験に用いられ、その他にも無性生殖や、微生物の産業 教材としての幅広い活用が期待できる。アルコール発 応用などの例として言及されることもある。菌類の中 酵の実験でよく用いられるドライイーストは、酵母を でも子嚢菌門に属する単細胞の真核生物であり、カビ 乾燥させた状態で保存したもので、酵母は生存しては から進化した生物と考えられている1）～4）。周囲に栄養 いるが、そのまま顕微鏡で観察しても出芽を行ってい が豊富にある状況では、出芽によって無性的に増殖す る （分裂期にある）細胞は少ない （図１A）。出芽を る。一方、生育に必須な炭素源や窒素源が枯渇する 観察するには酵母を培養する必要があると考えられる と、有性的な過程に入り、減数分裂を経て一倍体の胞 が、一般的な酵母の培養法には複雑な培地や煩雑な無 子を形成する。再び栄養が豊富になると胞子は発芽し