论理的思考力 - 山梨県总合教育センター.PDF

思考過程をふり返り，「論理的思考力」を育てる算数指導 －「相互向上コミュニケーション」の場を活用した授業を通して－ 研究の概要 この研究は，数理的な事象にかかわるコミュニケーションの視点を重視し，その活動を学習過程に 位置付け，相互交流による協働の学び合いの授業を通して「論理的思考力」の向上を目指そうとする ものである。また，小学校第５学年の「小数のわり算」の単元において，この「相互向上コミュニケ ーション」の場を活用した検証授業を行い，児童の「論理的思考力」にかかわる力の分析をする。 キーワード 論理的思考力 相互向上コミュニケーション能力 パフォーマンス・アセスメント Ⅰ 主題設定の理由 （１）学習指導要領から 現行の学習指導要領では，自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成す ることを願い，児童一人一人が自ら進んで考え，判断し，自信をもって表現したり，行動できる創 造的な資質や能力の育成を目指している。そのためには，自ら学ぶ意欲や思考力，判断力及び表現 力などの確かな学力を基本とする学力観に立ち，児童一人一人が，経験したり，学んだりしたこと を生かしながら，新たな問題に進んでかかわり，自ら考えたり，判断したり，試みたり，表現した りすることを基軸にして展開されることが必要となる。 小学校学習指導要領算数科の目標は，「数量や図形についての基礎的な知識と技能を身に付け， 日常の事象について見通しをもち筋道立てて考える能力を育てるとともに，数理的な処理のよさが 分かり，進んで生活に生かそうとする態度を育てる。」である。 この目標では，「見通しをもつこと」「よさが分かること」及び「活用すること」を強く強調し ている。これは，これからの算数教育が，情報化などの社会の変化に主体的に対応できるような資 質や能力を育てたり，論理的思考力や直観力などを育成したりすることを重視して進められていく ことを示しているものである。特に，「日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考える能力 を育てること」の内容では，日常の事象について問題を解決したり，判断したり，推論したりする 場合に，見通しをもち筋道を立てて考えることの重要性が述べられている。 以上のことからも，現代社会及びこれからの社会においても見通しをもち筋道を立てて考える力 は，極めて重要なものであり，将来に生きる子どもたちに欠くことのできない力であると考える。 （２）今日的な教育課題から PISA,TIMSS の国際学力調査の結果によると，我が国の学力は，全体として国際的に見て上位で はあるが，読解力などが低下傾向にあり，特に学ぶ意欲や学習習慣に課題が見られた。 また，平成 15 年度に国立教育政策研究所が実施した小中学校教育課程実施状況調査の算数・数 学の課題として，①計算，数量関係の意味を理解すること②数学的に解釈したり，自分の考えや推 論の過程を数学的に表現すること③日常の事象と算数・数学を関連付けること，などが挙げられて いる。 一方，本県が平成17 年度に実施した山梨県公立小中学校教育課程実施状況調査の報告によると， 小学校算数科では，特に「論理的思考力」の育成が必要であることが明らかにされている。 これらの結果から，算数の学習指導を進めるときには，児童一人一人が学習を楽しいと感じられ ること，自信を持って学習を進められること，「よくわかってできる」ことを目指す必要があると 言える。つまり，本質的な算数の楽しさやおもしろさに気付かせながら，自分で工夫して新しい方 法や考え方を創り出していく問題解決能力を育てる授業づくりが求められている。そのために，「論 理的思考力」を育てることは重要なことであると考える。 - 1 - Ⅱ 研究の目標 （１）第５学年算数科「小数のわり算」の単元において，「相互向上コミュニケーション」の場を活 用した授業モデルを作成する。 （２）作成した授業モデルに基づいた授業実践を通して，「相互向上コミュニケーション」の場を活 用した授業と「論理的思考力」の育成とのかかわりに関して検証と分析を行う。 Ⅲ 研究の基本的な考え方 １「論理的思考力」及び「相互向上コミュニケーション能力」 （１）「論理的思考力」に