二分法的な理解と柔软な理解-东洋大学.PDFVIP

二分法的な理解と柔軟な理解一他者理解の発達一 久保ゆかり (東洋大学社会学部〉 はじめに 従来、 「特性を考慮した他者理解」は、児童期に入ってから司能となるCFlavel1Miller，1998)とされて きた。しかし、最近の研究からは、 「特性を考慮した他者理解」は幼児期においてすでに始まっていること が示されている CLiu，Gelman，Wel1man，2007)。発達の早期において見出された他者理解は、どのよ うな特徴をもっているのだろうか。それは、どのような研究方法によって捉えられたのだろうか。本論文で は、発達の早期における他者理解の性質を、 「二分法的な理解」と「柔軟な理解」をキーワードとしながら 検討していく。 他者の内的特性の理解の発達 「特性を考慮し疋他者理解」は、児童期に入ってから司能となるCFlavel1Miller，1998)とされてきた、 従来の研究において、典型的に用いられていた課題は、次のようなものであった。すなわち、架空の人物に ついて特性を含意するいくつかの行動情報を提示し、それに基づいて別の状況での他者の行動を予測させる 課題である。 そのような研究の具体側として、 GneppChilamkuri(1988)がある。それは、次のような研究である。 6 -10歳の子どもたちに、「トミーという子の話しをします。トミーはお年寄りが階段を下りるのを聞けま した。転校生に学校を案内しました。お母さんのお手伝いをしてテーブルセッテイングをしました」といっ た行動情報を聞かせ、つぎに、「ある日、トミーはお母さんに妹の部屋をきれいにするのを手伝ってほしい と言われました」という情報を与え、 「トミーは手伝ったと思うか。どうしてそう思ったか。トミーは頼ま れてうれしかったか、悲しかつだか、どうしてそう思ったか」と子どもに尋ね、トミーという人物の行動と 情動反応を推測させた。 その結果、「過去の行動情報が含意する特性」と一致する推測(先の倒では「手伝った。うれしかったJ) をすることは6歳児でちみられたが、その傾向は年齢が高い子どもの方が顕著であり、 10歳児ではほとん どの子どもが多くの揚面で、そのような推測をすることが見出されだ。そのような研究からは、ある状況に 対レて人がする行動や抱く感情は、その人のそれ以前の行動や特性と強く関連していることを一貫して説明 できるようになるのは児童期に入ってからのことであるとされてきた(久保、 1997)。 それに苅して、最近の研究 CLiu，eta，.l 2007)では、幼児に、特性そのものを提示し、単純化した選択式 の質問をすることによって、特性を考慮しだ他者理解が、より早期から可能であることを見出している。具 体的には、 「メアリは意地悪Cmean)Jといった特性を子どもに提示し、 「公園で転んで泣いている子が い疋。メアリは、その子を見て笑うか、それとも助けるか。どっちをすると思う?Jといつだ単純化した二 択の質問をした。特性語としては、意地悪のほかに、わがまま Cselfish)、良い Cnice)、恥lすかしがり Cshy) といったものが使用された。その結果、 4.5歳児であってもそれぞれの特性に沿った行動を選択すること が偶然の確率よりも多かった。 4，5歳児が特性に沿った行動を予測できることを見出したのである。 ただし、特性ではなく、特性を含意する行動(たとえば、 「意地悪」という特性の揚合は、 「猫の尻尾を 引っ張る」、 「弟の積み木を階段の下に落とす」、 「学校でクラスメートを押して倒す」という3つ〉を提 示した揚合には、「どっちをすると思う?Jという質問で、それらに沿っ疋行動を選択することは偶然の確 率を超えなかった。 そこから泊児は、行動情報に基づいて別の状況での行動を予測することは確かに不得手であるが、特性が 与えられた揚合にそれに沿った行動を予測することは司能であり、 「特性を考慮した他者理解」の発達は、 幼児期にすでに始まっていると論じられている。 ー79- また松永 (2005)は、 4歳児であってもすでに、動画ストーリーによって提示した行動情報から、 「意地 悪J、 「やさしい」という特性を推測できることを示した。松永は、動画ストーリーを子どもたちに視聴さ せ、そこでの自発的な発話をも記録するといった、自然揚面により近い状況での子ども達