外来褥治疗问题対応.doc

在宅?外来における褥そう治療の問題と対応 鳥谷部俊一 Outpatient care for pressure ulcer. Challenges and achievements. Shunichi Toriyabe 特別?特定医療法人　相澤病院褥創治療センター統括医長 褥そうの標準的治療はウエットドレッシング療法である．創傷被覆材の保険適応期間が制限されている現状では，「ラップ療法」が，現実的な選択肢のひとつである．食品用ラップのかわりに穴あきポリエチレンフィルム／紙オムツや医療用フィルム／紙オムツを用いる自家製ウエットドレッシングは，ズリ応力を打ち消して創を保護する，感染をコントロールしやすい，処置が簡単であるなど，従来のドレッシングの欠点の多くを解決した．ラップ療法は，介護力や医療資源に制約のある在宅?外来医療の要求に応える処置法である．ラップ療法普及の鍵はその商品化にある．ラップ療法の特徴を生かしたドレッシングの商品開発がまたれる． Key words: 在宅／褥瘡／ウエットドレッシング／ラップ療法 Ⅰ　はじめに 日本は未曽有の高齢社会を迎え，脳血管障害後遺症などに伴う長期臥床患者（いわゆる寝たきり老人）が急増しており，また，がん終末期患者，事故?災害による脊髄損傷患者のように身体機能が障害されている患者も増えている．このような患者に発症する褥そうは，難治で長期間の治療を余儀なくされることが多い．一方，多くの医療分野で「入院から在宅?外来へ」の転換が進められており，第一線の医療現場からは「在宅?外来でできる褥そう治療」が求められている．在宅?外来医療は病院医療の延長ではない．医療資源?看護力?介護力が制限されている現場では，「2時間毎の体位変換」や「高価なドレッシング材の使用」は期待できず，介護士やホームヘルパーに「薬の外用やドレッシングの交換」を求めることはできない．ラップ療法は，このような問題の現実的解決法である．「ラップ療法と高機能エアマットの組み合わせ」なら2時間毎の体位変換は不要になる．ラップ療法の処置をオムツ交換と考えれば，介護士やホームヘルパーにも出来る「整容」になる． 紙面の制約のため本稿ではラップ療法の概要の紹介に留める．ラップ療法を実際に行う場合は，拙書1-2)あるいはラップ療法のサイト3）を参照していただきたい． Ⅱ　ラップ療法とはなにか 1996年のことである．一年以上治らなかった褥そう（直径15‐20cm）に食品用ラップを貼って治療したところ，約３ヶ月で治癒した．この経験を発表したところ，多くの追試研究がなされ，ラップ療法として知られるようになった4-6)． 2005年，ラップ療法は進化した．食品用ラップのかわりに穴あきポリエチレンフィルム／紙オムツや医療用フィルム／紙オムツを用いる処置法は，ウエットドレッシング療法の欠点の多くを解決した．筆者は，「開放性ウエットドレッシング療法Open Wet-dressing Therapy; OWT」 Ⅴ　ラップ療法の特徴 創傷治療の基本はウエットドレッシング療法である．すなわち，①消毒をしない②創を湿潤（ウエット）に保つ③浸出液を排出（ドレナージ）させて治療することである．ラップ療法は，この3つの条件を同時に満たす「ウエットドレッシング＋開放療法＝開放性ウエットドレッシング」である． ラップ療法には，以下の利点がある． 創に対し十分に大きなドレッシングをあてるため，局所の圧迫が最小限である． 創とフィルムの間に浸出液の薄膜が維持され，摩擦力を打ち消す． ズリ応力を打ち消す． ①②③の効果により，創の傷害が少ない． 壊死組織があっても治療できる．壊死組織は自己融解する． 創を閉鎖しないので，感染コントロールが容易である． 大きな創でも処置できる． 尾骨付近の褥そうも処置できる． 外用薬の併用が可能である． 簡単で，熟練を要しない． ラップ療法＝「おむつ交換の一部」と考えれば，介護職にもできる「整容」である． 安静を必要としない． リハビリを継続できる． 高機能エアマットを併用すれば，「褥そう治療目的の」体位変換が不要である． 褥そうの予防効果がある． 経済性に優れる． Ⅵ　ラップ療法から読み解く創感染 従来のウエットドレッシング療法は閉鎖療法ともいわれ，創の閉鎖を当然とするものであった．感染創の処置ができないという問題と，消毒剤や抗菌外用薬を併用せざるを得ないために創治癒を遷延させるという欠点があった．それに対しラップ療法は「ウエットドレッシング＋開放療法＝開放性ウエットドレッシング療法Open Wet-dressing Therapy OWT」という新しい治療概念に基づく処置法である1-2)．創を湿潤（ウエット）に保ちつつ浸出液を排出（ドレナージ）