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化猫の由来 犬とともに人間の生活に非常に身近な動物のひとつが猫である。猫は、日本には奈良時代頃に、中国からの経典などをねずみの害から守るために、それと一緒に輸入されたといわれている。実際、鎌倉時代に金沢文庫では、宋から猫を輸入し、典籍をねずみから守っていたそうだ。文献では『日本霊異記』の説話に初めて記述され、死後猫に生まれ変わった人の話しが残されている。平安時代からペットとして飼われていたということで、『枕草子』や『源氏物語』にも登場している。犬は、金持ちか猟師などしか飼っていなかったのに対し、猫はもっと幅広く人々に飼われていたようだ。また犬が外で飼われていたのに対して、家の中で飼われていた猫は、より人間に身近な存在であったと考えられる。しかし人間の身近に生活しながらも、昼と夜とで細くなったり、太くなったりと変じる瞳や、表情、動作などから、人々は猫に神秘的なものや気味悪さも感じていたようだ。犬のように飼い馴らされず、どこか野性的で人間をよせつけない習性をもっているため、油断のおけない魔性のものと考えられた。それでもなお、猫が飼われたのは、ねずみ退治のためであった。作物を荒し、病気を運ぶのみならず、蓄えた穀物や織物用のまゆをつくる蚕まで食べるねずみの害は、農民にとって大変深刻なものであった。そこで猫の重要性は非常に高まり、養蚕の普及とともに、猫も多くの農家で飼われるようになった。江戸時代には、養蚕農家に猫絵を描いて売り歩く者もおり、猫が手に入らない土地では、こうした猫の絵をもちいて、鼠を駆除するための呪いをかけたりしたということだ。飼い猫や絵に描かれた猫が、古寺で大鼠に襲われた主人の命を救う『猫寺』などの話しは、おそらく猫の効用を説く、猫絵師などが深く関わって流布した昔話であろう。このように、ねずみを捕まえてくれる猫は、農民にとっては大切な作物の守り役でもあり、蛇、狼、狐などと同じように神としても扱われた。 猫が死んで、人々を病から救う薬師さまになったと語る『猫薬師』という話しなどもある。 猫は、良くも悪くも、呪力を用いたり、化けたりする存在と信じられていた。『猫檀家』は、貧乏な寺に飼われていた猫が、世話になった恩返しのために、野辺送りの棺を空に上げて、飼い主だった和尚に手柄を立てさせる話しだ。この話しの背景には、猫が死体を盗むという葬制の民俗が反映しているということである。『猫檀家』は猫の恩返し話しだが、民間では、死者の上を猫がまたぐと生き返るので、猫をよけるために死者の枕もとに刃物をおくとか、葬式のときは猫を人に預けたり、蔵に閉じ込めたりする習慣があったり、猫に道を切られると縁起が悪い、猫を殺すと崇るなどと猫を恐れる心意は強い。昔話に登場する猫も、一般にこうした魔もの的な性質を帯びていることが多い。このような話しとしては、山中で狩人の飼い猫が主人の命を狙う『猫と茶釜のふた』や、鍛治屋の飼い猫が、老婆を殺してそれになりすます、夜になると山中で旅人を喰い殺す『鍛治屋の婆』、歌い踊る姿を飼い主に目撃されてしまう『猫のおどり』などいろいろな話しが各地に残されている。『猫と南瓜』は、盗みを見つけられて殺された猫が、自分の死骸から毒南瓜を生じて怨みを果たそうとするという話しで、猫の執念深い一面が伺える。化猫の特徴 犬が化けるという話しはほとんど聞かないが、狸、狐とともに、猫が人語を操り、踊ったり、化けたりするのはなぜだろうか。古猫は化けるとよくいわれるが、ところによっては三年、または十三年飼うと化けるとか、一貫（約3.75?）あるいは二貫以を越すと化けるなどといわれている。猫というのは執念深い動物で、『鍋島の猫騒動』をはじめ、講談で語られる『有馬の猫騒動』など人を襲う化け猫の話しは数限りなくある。しかし猫は化けて人間に危害を加えるだけでなく、人間を助けてもくれることもある。川藻を体につけて盲人に化けて、お金を稼いで貧しい主人を助けた猫の話しや、同様に世話になった主人のために娘に化けて歌や踊りでお金を稼いだり、女に化けて嫁にきたりするという恩返しの話しがある。このように猫は化けるため、猫を飼うときには、最初にに猫に向かって「二年間飼ってやる」とか「三年間飼ってやる」とか、年限を定めて飼わなければならない。年期を決めずにおくと、古猫になって化けることがある。しかし年期を定めておくと、年期がくるとどこへともなく姿を消してしまう。そして毒を食うか殺されない限り、その死骸を人間には見せないということだ。人間が猫を殺したらその死霊にとり憑かれ、助けてやろうとしてもその死霊から逃れられないという言い伝えもある。一方沖縄では、猫が死ぬとその死骸を木の上に吊り下げるという習慣