教職志望者と臨床心理職志望者の人格特性の 相違に ….pdfVIP

京都教育大学紀要　 No.115, 2009 99 教職志望者と臨床心理職志望者の人格特性の 相違について －教師とスクールカウンセラーの協働に向けて－ 角田　豊 On differences of personality traits between aspiring teachers and aspiring clinical psychologists For collaboration between teachers and school counselors Yutaka KAKUTA Accepted July 1, 2009 抄録 : 本研究の目的は，教職志望者と臨床心理職志望者の人格特性の違いを明らかにすることであった。教職志 望者101 名と臨床心理職志望者96 名に対して，新性格検査と共感経験尺度改訂版が施行された。分散分析の結果， 次の特徴が示された。教職志望者は，臨床心理職志望者よりも，（1）社会的に外向的で，（2）活動的であり，（3） 自己顕示的で，（4）攻撃性が強く，（5）非協調的な面を持っていた。一方，（6）臨床心理職志望者は，教職志望 者に比べて，他者の感情状態への感受性が高かった。 索引語 : 人格特性，協働，教師，スクールカウンセラー， Abstract : The purpose of this study is to clarify differences of personality trait between aspiring teachers (AT) and aspiring clinical psychologists (ACP). One hundred and one AT and ninety-six ACP were asked to take the New Personality Inventory and the Empathic Experience Scale Revised(EESR). ANOVA indicated that AT tended to be more (1)social extroverted, (2)active, (3)exhibitionistic, (4)aggressive, and (5)uncooperative than ACP. On the other hand, ACP tended to be more (6)sensitive to others affective states than AT. Key Words : personality trait, collaboration, teacher, school counselor 1．問題と目的 近年，スクールカウンセラー（以下，ＳＣと略記）が多くの学校現場に配置されているが，ＳＣが 機能的にその学校で職務を遂行するには，教師とＳＣの連携（collaboration）が欠かせない。心理臨床 の観点から，亀口（2002）は協働の定義を次のように述べている。「所与のシステムの内外において異 100 角田　豊 なる立場に立つ者同士が，共通の目標に向かって，限られた期間内に互いの人的・物的資源を活用し て，直面する問題の解決に寄与する対話と活動を展開すること（p.7）」。現状の教師とＳＣの連携にお いては，学校・教師が直面する心理学的な児童生徒や家庭の問題を，教師とＳＣが相互の長所を生か しながら協力して解決を模索する，ということになるだろう。しかし，実際のＳＣが配置された学校 においては，効果的な連携がなされる場合もあるが，教師とＳＣの考え方や姿勢の違いから連携する 関係が成立しなかったり，事象への早期の対応が求められるといった学校現場で生じる問題の質に よって両者の連携がとりにくい場合も多く見られる。 多くのＳＣが，