高分子生物医学材料-j-stage.pdfVIP

特集●高分子の要求性能とその評価 高分子生物医学材料 赤池敏宏 Toshihiro Akaike, 東京農工大学工学部 わち生体適合性 とは 材「料 が生体組織 と接触 した時, ●印:現行の人工腎臓(体外循環型)に要求される性能 ○印:完全社会復帰を保証する人工腎臓(内蔵型)に要求さ 生体側は もちろん,材料側にも不都合な副反応を引き れる性能 起 こさず,目的 とす る機能を果たす性質である」 とい カッ ト=体内埋め込み型人工腎臓に課せ られた要求性能 える.生体適合性をま とめると図1の よ うに整理 され よ う.便宜上,代 表的な生体反応を血液反応,免 疫反 1.は じ め に 応,そ の他の組織反応 とに分け,さ らにそれぞれの要 近年活発 に研究 されてい る生物医学材料は医学な ら 素反応 の代表例 を列挙 した ものである,生体は高度な びに生物学 に関連す る材料 の総称である.そ のカバー システム系を構成 してお り,それぞれの反応が相互に す る領域は,生命現象に基礎をお く科学 と技術 の全般 関連 してい ることはい うまでもない.あ る一つの生物 に及び,それ ゆえ広 くかつみの り豊かである1).高分 医学材料は,医 用機能性 と生体適合性を どの よ うに兼 子材料 は,単 なる容器や分離材以上の ものにな りつつ ね備えなければな らないか.こ の点について,い わゆ ある.そ して,直接的な臨床医療 の領域 において各種 る人工腎臓を例に とって考之てみ よ う. 医療用 品や人工臓器用材料 として,実質的な機能 の担 ヵッ ト図の白丸のプロッ トは,将 来高分子材料 が腎 い手 となってきた,こ こでは生物医学材料 の意味を医 臓の機能を生体内で代行す るために,ど うしても満た 療 に寄与す る材料 としてとらえ,特 に高分子材料 に課 さなければな らない性能 を概念的に 目盛 った ものであ せ られた性能 と評価 の問題に限定 して私見を述べる. る(円の中心に近いほ ど性能が高い ことを意味 してい る).一方,性 能面でさまざまな不十分性があるがゆ 2。高分子生物 医学材料の要求性能 えに,病 院において体外循環方式で しか使用できない 医療 に役立つ材料を設計す る うえで,医用機能性 と 現在の人工腎臓 の性能を,比較 のために図中に同 じく 生体適合性 が二大要件である.すなわ ち①治療 または 概念的に黒丸で示 してある。患者の完全社会復帰准保 診断への効果 を果 たすための医 用機能性② 安全性 障す る 内蔵型(イ ンプラン ト型)(点線)に す るため を確保するための生体適合性で ある.医用機能性 に,秘 料 の諸機能を大幅に レベルア ップす る課題が, とは,各種人工臓器やデ ィスポ製品な どの用途その も い く手にのしかかっていることがおわか りいただける のである.た とえば血液導管機能を 目的 とした人工血 と思 う.図2の例で も明 らかなよ うに,図1で 示 され 管材料の開発,酸 素運搬機能を 目的 とした人工赤血球 たさま ざまな生体適合性の要素性能は現状 ではそれぞ の開発な どが進め られてきた.骨格 ・運動系 システム では,生 体構造支持機能 ・関節機能をめざして人工骨 ・ 赤池敏宏 東京農工