Nonhomologous endjoining 最近の知見と臨床への応用.docVIP

放射線生物研究　41(1), 2006 Ｐ1～Ｐ27 ＜総　説＞ Nonhomologous end-joining：最近の知見と臨床への応用 Institute of Molecular Medicine and Genetics, Medical College of Georgia　　 竹田義彦　　 はじめに 　生物の遺伝情報が収められている染色体は、それぞれ単一の二本鎖(double-strand)DNA(dsDNA)からなっている。これらは、常に種々の損傷の危険にさらされているが、その中でも二本のDNA鎖が非常に近接した位置で同時に切断されるDNA二重鎖切断、DNA double-strand break (DSB)、は最も危険なDNA damageのひとつである(1,2)。この種の損傷は放射線照射や、ある種の化学療法剤によって引き起こされるほか、DNA複製の段階で親DNAにsingle-strand breakが存在する場合にも生じる。また生理的に、リンパ球内での抗原receptorの特異性の確立に関与するV(D)J recombinationの過程や、減数分裂の過程においても起こされる。もしも、この切断が修復されないと、細胞内でcell death signalが活性化され、これらの細胞は死に至る(3) 。また、切断されたDNAが、転座(translocation)を起こせば、癌へのtransformationの可能性が生じる(4)。よって、この損傷の修復は細胞の生死に関わる重要な機能である。 　有核細胞はこの致命的なDSBを修復するために二つの機能を有している(2,5,6)。ひとつは相同組換え、homologous recombination(HR)、そしてもうひとつは非相同性断端結合、nonhomologous end-joining (NHEJ)、である。HRは損傷を受けていないDNAをtemplateとする修復過程であり、templateとしてsister chromatidを必要とするのでcell cycleのlate-S、およびG2 phaseにおいて機能する(7,8)。それに対してNHEJは長いhomologous templateを必要としない、切断された断片同士の直接的な結合である(2,9-11)。Yeastにおいては、HRが主なDSB修復機構であるが、mammalian cellなど多細胞生物の有核細胞ではNHEJがDSBに対する主な修復機構である。NHEJは直接のDNA断片の結合であるので、正確さの上ではHRより劣っている。それにも関わらず、これらの細胞がNHEJ pathwayを主に利用するのは、yeastに比べ染色体に反復配列が多く存在す 　　CB-2803, 1120 Fifteenth Street, Augusta, GA 30912 U.S.A. 　　TEL:706-721-8757　FAX:706-721-8752　e-mail:ytakeda＠mcg.edu キーワード：DNA二重鎖切断（DNA double-strand break） 　　　　　　非相同性断端結合（nonhomologous end-joining） 　　　　　　single chain fragment variable antibody (scFv) 放射線生物研究　41(1), 2006 Ｐ28～Ｐ41 ＜総　説＞ 航空機内宇宙放射線被ばくの調査研究に係る現状と課題 放射線医学総合研究所　放射線安全研究センター　　 保田浩志　　 １．はじめに 　航空機で高高度を飛行している時には、地上で日常浴びているより百倍程度強い自然放射線に曝される。この放射線強度の上昇は宇宙から来る放射線、いわゆる宇宙放射線に由来し、航路が高緯度（正確には高地磁気緯度）にあるほど、また、フライト時間が長いほど、飛行中に浴びる宇宙放射線の量は大きくなる。 　航空機搭乗中に受ける宇宙放射線による被ばく（以下「航空機内被ばく」という。）の取り扱いについては、欧米などにおいて活発な議論が過去行われ、現在では一段落した感がある。国際放射線防護委員会（ICRP）は、ジェット機の運航に伴う被ばくを職業被ばくの一部に含める必要性があるとの見解を既に1990年の勧告1）で示しており、欧州連合（EU）理事会は、1996年の指令2）において、航空機乗務員の宇宙放射線被ばくを管理するよう加盟国に指令している。これを受けて、2005年現在、ほとんどのEU加盟国がこの指令に適合する措置をとっている。米国、カナダ、中国等でも、独自のガイドラインを設けて対処している。 　我が国では、宇宙放射線が制御の難しい自然放射線であること等の理由から、最近まで航空機内被