水蒸气蒸留で精油成分を取り出す.pdfVIP

１ においのある有機化合物 (１) 芳香族化合物 芳香族化合物は、ベンゼンを代表とする環状不飽和有機化合物の一群。炭化水素のみで 構成されたものを芳香族炭化水素 、環構造に炭素以外の元素を含むものを複素芳香族化合 物と呼ぶ ベンゼン 安息香酸 サリチル酸 ナフタレン (２) テルペン類(精油等) テルペン類は、植物精油(essential oil)の重要な構成成分である。「テルペン」の語源 はテレピン油であるが、実際はテレピン油に限らず多くの植物の精油の主成分である。そ れらは形式上2つ以上のイソプレン単位 (C5) から構成されており、イソプレン単位の数に 応じて、それぞれモノテルペン (C10)、セスキテルペン (C15)、ジテルペン (C20)、セス タテルペン (C25)、トリテルペン (C30)、テトラテルペン (C40) と呼ばれる。 モノテルペンはバラや柑橘類のような芳香を持ち、香水などにも多用される。例えばリ モネンはレモンなど柑橘類に含まれる香気成分であり、溶剤や接着剤原料などとしても利 用される。メントールは爽やかな芳香を持ち、菓子や医薬品に清涼剤として用いられてい る。 モノテルペン(C10) イソプレン リモネン シトラール(ゲラニアール) (オレンジの香) (レモンの香) (３) エステル エステル (ester) は、カルボン酸等の有機酸や硫酸等の無機のオキソ酸が、アルコール と脱水縮合してできた化合物である。低級脂肪酸と低級アルコールからできた形のエステ ルは、果実臭を持つものが多い ＲＣＯＯＨ ＋ ＲＯＨ ＲＣＯＯＲ ＋ Ｈ Ｏ ２ ○ 酢酸エチル ： CHCOOCH ･･････ 西洋ナシの香 3 2 5 ○ 酢酸ペンチル： CHCOOCH ･･････ バナナの香 3 5 11 ○ 酪酸メチル ： CH(CH)COOCH ･･････ リンゴの香 3 2 2 3 ○ 酪酸エチル ： CH(CH)COOCH ･･････ パイナップルの香 3 2 2 2 5 ２ 植物の精油成分を取り出す方法 (1) 水蒸気蒸留（Steam Distillation） 水蒸気蒸留は、蒸気圧の高い高沸点の化合物を沸点以下の温度で蒸留する方法である。 水蒸気を連続的に蒸留容器に導入すると共に、蒸留容器は加熱状態にして容器内を加熱 水蒸気で満たし、流出する加熱水蒸気を水冷管で冷却して目的物を水と共に冷却捕集す る。通常は水に溶けにくい物質を水蒸気蒸留する。 (2) 水蒸気蒸留装置 水蒸気蒸留装置(図 1)は植物の精油を抽出する装置として 13 世紀より利用されてき た。花や葉などの柔らかい植物を、そのまま蒸留器に入れ、集中的に水蒸気を浴びせ、 その熱で植物の芳香成分を揮発させる。その芳香成分を含んだ水蒸気は、冷却管を通っ て液体に戻り、この液体の表面に浮いた軽い芳香成分が、精油として得られる。多くの 精油がこのような装置で抽出されている。 図１ 水蒸気蒸留装置 (3) 簡易水蒸気蒸留装置 身近なスチール缶を利用して安価に安全に水蒸気蒸留行うことのできる装置である。 この装置の利用法としては次のような実験や観察が考えられる。 ア クスノキの葉や幹から精油成