肠管出血性大肠菌O157-感染症学雑志ONLINEJOURNAL-日本.PDFVIP

211 第71回日本感染症学会総会学術講演会座長推薦論文 腸管出血性大腸菌O157:H7に 対するCatechinの 殺菌作用および抗毒素作用 1)昭和大学医学部細菌学教室 ,2)北里研究所基礎研・免疫 3)三井農林株式会社食品総合研究所 大久保幸枝1)佐 々木武二2)原 征彦3) 森 扶美代1)島 村 忠勝1) (平成9年9月16日 受付) (平成9年11月11日 受理) Key words : catechin, enterohemorrhagic Escherichia coli (EHEC) 0157: H7, bactericidal activity, anti-toxin, vero toxin (VT) 要 旨 菌作用およびその主要病原因子であるvero toxin(VT)に 対する抗毒素作用について検討した. で経時的に測定した.そ の結果,緑 茶抽出エキス1.25～2.5(通 常飲用濃度)%中 の菌1×104CFU/mlが3 ～5時 間で死滅した.ま たEGCgの 場合,高 濃度(100～400μg/ml)で は生菌数は経時的に減少し,24 時間で死滅した.低 濃度(25～50,μg/ml)で は,5時 間までは生菌数に変化は見られなかったが,24時 間 で50μg/ml中 の菌は死滅し,25,μg/ml中 の菌ははじめの1/10に 減少した. 抗毒素作用は,ま ずin vityoでVT2 2ng/0.1mlとcatechin0.5～2mg/0.1m1をそれぞれ等量混合し, 時間では0%,12時 間では40%,18時 間および24時 間では100%阻 止した. 以上の結果よりcatechinはEHEC O157:H7に 殺菌的に作用するばかりでなく,産 生されたVT2の マウスに対する致死毒性を中和する作用のあることが判明した. 序 文 は細菌細胞膜の脂質二重層を破壊し殺菌作用を示 我々は1988年 以 来茶 お よび茶 か ら精製 した す10に とを証明した.腸管感染症起因菌1)および食 中毒起因菌1)に対する作用についてもその成績を catechinの 殺菌作用1)2),抗 ウイルス作用3)4),抗 真 菌作用5)6),細 菌外毒素阻害作用7)お よびそれ らの既に報告した. さて,平 成8年5月 より全国各地で多発した 作用機序4)6)10)ならびにcatechin構 造 と機能 との EHEC O157:H7に よる感染症は,出 血性下痢を 関係8)9)について報告して きた.さ らに,catechin 特徴とするほか,続 発症として溶血性尿毒症症候 別刷請求先:(〒142-8555)東 京都品川区旗の台1-5 -8 群(HUS)や 中枢神経障害を伴う急性脳症を引き 昭和大学医学部細菌学教室 島村 忠勝 平成10年3月20日 212