防犯灯基本事项整理.pdfVIP

第１章 青色・防犯灯をめぐる基本事項の整理 （要 旨） 【灯りの安全文化史に新機軸】 ○わが国の防犯灯は、夜間における犯罪防止、公衆の安全を図る目的で、1961（昭和36）年 「防犯燈等整備対策要綱」が閣議決定され、全国的に「明るい街づくり運動」が展開、防 犯照明による犯罪対策がはじまった。 ○2000（平成 12）年、警察庁「安全･安心まちづくり推進要綱」の制定により、防犯灯に必 要な道路等の照度値（４ｍ先の人の挙動、姿勢等を識別できる程度の照度。水平面照度が 概ね３ﾙｸｽ程度）がはじめて明記された。 ○さらにこれを受けて、2007（平成 19）年４月現在、全国 32 都道府県の生活安全条例で 防犯照明の照度レベルが定められた。 【青色・防犯灯】 ○青色・防犯灯は、2000(平成12)年を契機に英国で景観改善を目的に設置された青色・防犯 灯が犯罪減少効果もあった旨の報道があり、2005（平成17）年６月奈良市秋篠台ではじめ て設置されたことから、急速に全国に拡がりをみせている（2007（平成 19）年３月では 37都府県で青色・防犯灯の設置を確認。警察庁調べ）。 ○この背景には 2002（平成 14）年に刑法犯犯罪認知件数が戦後最多を記録するなど、市民 生活の身近な犯罪の急増による体感治安不安の増大ということが指摘できよう。近年、 警察による検挙活動に加えて、自治体や地域団体が一体となって犯罪被害の未然防止策や 犯罪を生まない安心安全まちづくり施策の展開が本格化するなかで、住民の防犯意識や 自主的な防犯活動を持続的発展的に活性化する方策が求められており、こうした潮流の 中で青色・防犯灯が一躍脚光を浴びることとなったと考察される。 ○2004（平成16）年に地域住民等による防犯パトロール車に青色回転灯の設置が初めて認め られ、地域の防犯活動に「青色」がある種の安心安全のシンボルカラーとしての認識が 拡がり、これが青色灯をめぐるマスコミ報道などと相俟って、地域防犯に熱心な地域が 主体となって導入が進められたのではないか。 ○先行研究では、有彩色光下での視認性、主観的印象、防犯カメラ映像への影響、現場での 視認性・印象、設置地区の住民意識、被疑者による評価、犯罪発生状況（平成 18 年度 （財）社会安全研究財団助成研究。代表研究者：井上容子/奈良女子大学教授）などがある。 23 24 第１章 青色・防犯灯をめぐる基本事項の整理 １ 防犯灯の機能と「犯罪抑止」効果 1-1 わが国の防犯照明の系譜分析 (1) 夜間の照明安全文化史からのアプローチ（問題の意義と展望） 夜間における市民生活の安心安全に極めて重要な意義を有する｢まちの防犯灯｣。 防犯灯が、今日ほど人々の関心を引いたことがこれまでにあったであろうか。人類の 歴史において、夜間の｢灯り｣による安全文化は、点から線（街灯）、線から面（地域 全体）、面から空間（Feu理論）へ進化しつつある。 特に、近年の日本におけるこの分野の発展には目覚ましいものがある。そして、 この流れに拍車をかけたのが青色・防犯灯であった。 (2) 夜間の安全文化に転機：防犯灯をめぐる２つの画期的出来事 第１は、国レベルにおける動向で、2000（平成 12）年に制定された｢防犯照明に 関する新基準｣である。防犯灯に関する施策としては、実に、1961（昭和 36）年の 防犯灯に関する閣議決定以来、約40年ぶりのことであった。 ｢防犯照明に関する新基準｣は、警察庁により「安全・安心まちづくり推進要綱」と して示されたものである。わが国で初めて、国のレベルで、照度（明るさのレベル） に関する基準が明示された意義には大きなものが