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『含フッ素ポリイミドの光学物性と応用』 東京工業大学・有機高分子物質専攻　安藤 慎治 第１節　はじめに. 　ポリイミド(PI)は有機高分子物質の中で最高レ O O 1 ベルの熱的安定性(標準値として250℃以上のガ N C C N O ラス転移温度と400℃以上の熱分解開始温度)、 C C O O 機械的靭性と柔軟性、優れた電気特性(絶縁性、 PMDA ODA 誘電特性)を有するためにスーパーエンジニアリ 2 O F3C CF3 O C C C CF3 N N C C ングプラスチックと呼ばれ、これまでもエレク C CF3 O O トロニクスや航空宇宙の分野で幅広く使われて 6FDA 4,4-6F きた[1,2]。エレクトロニクス分野では加えて低 ミドのフッ素化は一般に、・. 誘電率と屈折率の 誘電率と低熱膨張率が、航空宇宙用途では耐紫 低下、・. 可視光および近赤外光の透過性向上、 外線/放射線性、耐湿熱性、耐薬品性などが求め ・. ガラス転移温度(Tg)の低下、・. 原料の反応 られている。一方、このポリイミドを光通信や光 性の変化(特に原料ジアミンの反応性低下)、・. インターコネクション用の光学部品材料に適用 自由体積の増加、・. 吸水率の低下、・. 熱分解 する研究が近年進められ、この分野では近赤外 温度の上昇、・. 溶解性の向上、・. 気体透過性 光に対する高い透明性と低い吸湿性、そして光 の向上、・. 耐放射線性の向上、・. 熱膨張率の 学用半導体部品とのハイブリッド化やモノリ 増加をもたらすと言われている[4]。優れた含 シック化を可能とするハンダ耐熱性(270～300フッ素PI光学材料を開発する際のポイントは、 ℃)が要求されている[1a]。しかし、無水ピロメ ポリイミド本来の特性を減ずることなく、フッ リト酸 （PMDA）と4,4-ジアミノジフェニル 素の優れた特性を引き出すことにある。 エーテル（ODA）から合成されるポリイミド (PMDA/ODA, 通称Kapton, 分子構造: 1)に見 第２節　ポリイミド光学材料とは？ られるように、汎用PIは可視光の吸収端が500 ２.１ 含フッ素ポリイミドの誕生. nm付近まですそを引き、黄褐色～茶褐色に着色 しているだけでなく、ナノ～サブミクロンオー ンゼン環をヘキサフルオロイソプロピリデン基 ダーの秩序構造が存在するため、紫外・可視域の (-C(CF)-：6F結合と呼ぶ)でつないだ酸無水物 3 2 みならず近赤外域の光透過性も高くない。これ