錯視ブロック遊びを通した科学的思考の育成ワークショップ.pdfVIP

年次活動報告書2013 錯視ブロック遊びを通した科学的思考の 育成ワークショッププログラムの開発 東北大学 助教 大谷 智子 1．はじめに 三次元トリックアート等，錯視を利用したエンタテ インメントが，ここ数年増加し，身近になった．一方 で，錯視そのものの構造や理論は難しく，そこで利用 されている錯視の原理に興味が向けられたとしても， それを理解するには，多くの場合，大学での心理学講 義を待つ必要がある．また，小中学生では，しばしば 実験データを自分で整理・分析し，そこから引き出し [1] た解釈や考察を説明することに困難が見られる ． そこで本研究では，そのような科学的思考を育成す るワークショッププログラムの開発を行った．このワ Fig.1 錯視ブロック ークショップでは、参加者が錯視パターン、あるいは [1] その要素を表面に貼り付けたレゴ®ブロック を組み 13 歳）を実施したところ，滞りなく遂行できたこと 立てながら、予測される完成イメージと実際の作成物 [a,b] が報告された ．以下では，これらのうち，宮城県仙 の差異を評価する．この「予測から評価までの過程」 台市青葉区内の高等学校1～2 年生10名（男性9 名， をパッケージ化するため，視知覚・認知過程の概念お 女性1名）を対象に実施した例を報告する． よび体験者の発達段階を考慮した手順を考案し，心理 2.1.方法 学実験や基礎評価を通して検証した． 参加者らは，グループごとに向かい合って座った． 参加者の前には，各自が使用する錯視ブロックが置か 2．ワークショップ れている．凸凹ブロックでは，中央の凹凸知覚を起こ ワークショップでは，参加者らは，錯視ブロックと す形状が正方形とダイヤモンド形を計 16 個，Café 無彩色のブロックを用い，立体物を作った．錯視ブロ wall ブロックでは矩形縞（6 つ）と正弦縞（3 つ）の ックの表面テクスチャには，三種類の錯視を採用した． 計9 個，輪郭ブロックは8 個であった． 1 つ目のテクスチャは，物理的には平らである面に陰 本調査でのワークショップは，90分で構成された． [2] 影によって凹凸の知覚 を生じさせる （Fig.1a）．2 つ まず，参加者は，20 分間で錯視ブロックを用いて立 目は，Fig.1b のブロックのように，黒い背景の上に白 体物（錯視条件）を作成した．このとき，錯視ブロッ い線があるように見える．さらにこのブロックを複数 ク表面の模様を効果的に利用するように教示した．さ 組み合わせると、白い線がつながって知覚される．3 らに作成者は完成した立体物に題名をつけた．次に， つ目は，ブロックの輪郭線が物理的には平行であるに 参加者は作成した立体物と同じ構造の白色の立体物 [3] も関わらず，傾いて知覚