Ludwing van Beethoven 作曲Piano Sonate 第8 番, c.pdfVIP

愛媛大学 - Ehime University Title moll，op．13， Pathetiqueの教授法 Author(s)佐々木, 正嘉 愛媛大学教育学部紀要. 第I部, 教育科学. vol.44, no.2, Citation p.157-184 Issue Date1998-02-28 URL Rights Note 愛媛大学教育学部紀要　教育科学　第44巻　第2号　157～1841998 　　　　　　　　“Pathetique”の教授法 佐々木　正　嘉 　　（音楽教室） （平成9年9月30日受理） 　　　　　　　　　‘‘Pathetique，「by　L．v．Beethoven Masayoshi　SAsAKI 序 晴しさと共に，Beethoven自身の人生や，彼の人間哲学，そして計り知れないピアニズムが 内包されていることから，ピアノの新訳聖書と言われ，数多くの音楽家のみたらず，音楽愛好 家にも愛され続けられています。これらのSonateはHaydnの影響が強い初期と彼の円熟期 の中期，そして超越した人問性を感じさせる後期とに分けられますが，作曲的また音楽的にも 傑作が並んでいるのは中期と後期の作品でしょう。しかし，演奏的にはいずれも大変た曲が並 んでいます。 　Beethovenの殆んどの作品は，講読みと一応の演奏はそう困難ではありませんが，音楽的 た演奏となると大変です。何故たら，ただ，単に弾くだけでは決して音楽にならたいので，演 奏者はその中に心と魂を入れ込む事に全身全霊打ち込まねばたらないからです。そのためには Beethovenを良く知ること，作品の時代背景を良く考察すること，そして何よりも，研究し た諸々の知識を元にしたイメージ創りと音創りに，時間と労力を惜しまないことです。 　この論文は，今までの論者のピアノ教育家としての25年余の経験を中心にBeethovenの かに演奏したら良いのかを探求しだから，その為の音創りとイメージ創りを中心に，出来るだ け解り易く，出来るだけ容易に書いてみました。 　世界の音楽の世界で，イメージ不足と言われる日本の生徒達，作曲家に関係なく何セも同じ 157 佐々木正　嘉 音質で何となく弾いてしまう生徒達が，この曲を学ぶ事によって，この論文を読む事によって， 少しでも，ピアノに対する姿勢が変わるよう願っています。ピアノーを愛する生徒諸君にとって， また論者と同じくピアノを教えている先生方に，大いに利用される事を心より願って序文とし ます。 います。 　曲は3楽章より成っていますが，今までのSonateには見られたいGraveの導入部を第1 楽章に取り入れ，彼独自の手法が少しずつ開花して行く様を呈しています。また，各々の楽章 のパラソスが良く，音楽的には勿論のこと，作曲的にも優れている名曲です。曲に付けられて いる“Pathetique’’と言う名前はギリツヤ語“Pathos’’に由来すると言われていますが，日本 語の“悲しみ”，“苦難’’，“何かに心打たれ感動した状態’’の意味です。 ‘‘ 純泣hシュタイゾ’，“熱情’’，“テレーゼ”，“告別”，“ハンマークラヴィア’’等がありますが， 彼自身の命名はこの“Pathetique”と“告別”の2曲のみです。この事からしても，この曲に 対する彼の思い入れを伺い知る事が出来るでしょう。 　では，何故にBeethovenはこの曲を書いたのでしょうか。この事について知るのは，この 曲を理解し，演奏する上で最も大切なキーポイントになりますので一言触れる事にしましょう。 　ご承知のようにBeethovenは耳病に苦しんだ音楽家です。彼の耳病は，この曲を作り出す 少し前頃から始まるのですが，音楽家として将来を嘱望されていた彼の事，人には言