家庭用冷蔵庫の利便性と省エネルギー性の追求.pdfVIP

特集 家電製品の快適性・利便性を支える技術 253 5. 家庭用冷蔵庫の利便性と 省エネルギー性の追求 In Pursuit of Convenience and Energy Conservation for Household Refrigerators キーワード：家庭用冷蔵庫，省エネルギー，冷凍サイクル，除霜，断熱，鮮度 Household refrigerator, Energy conservation, Refrigeration cycle, Defrost, Thermal insulation, Freshness 大平　昭義 Akiyoshi OHIRA 船山　敦子 Atsuko FUNAYAMA をさらに高めるため，冷蔵庫の開発に取り組んでいる． 1. は　じ　め　に 図１は2011年秋に発売した大容量冷蔵庫「真空チル 我々は，日々の暮らしの中で様々な電力を消費してい ドi（インテリジェント）」の外観写真である．本シリー る．資源エネルギー庁の電力需給の概要（平成16年度） ズ冷蔵庫の最大容量となる670 L（型式R-B6700，幅825 によると，家庭内における冷蔵庫の消費電力量の割合は ×奥行き728×高さ1818 mm）で，冷蔵庫の中段部分に 16.1 ％であり，エアコン（25.2 ％）に次いで2番目に大き 冷凍室を配置した6ドア冷蔵庫である．冷蔵室の下部に いため，省エネルギー性能の向上に関する市場のニーズ は約0.8気圧に減圧した「真空チルドルーム」を設け，保 は非常に大きい．一方，最近の日常生活を振り返って見 存中の食材の鮮度劣化の抑制を図っている．また，冷凍 ると，共働き世帯の増加などに伴い，週末の食材のまと 室と野菜室に電動引き出しを採用し，大容量であっても め買いや宅配サービスによる食材の購入により，一度に ドアの開閉が軽く行えるような機能を装備している． 多くの食材を調達できるようになってきた．このような 本報では，冷蔵庫の利便性を支える技術として，大容 ライフスタイルの変化に対応するため，冷蔵庫の大容量 量化を実現する省スペース，省エネルギー技術と，食材 化が加速してきている．利便性の追求のため冷蔵庫の大 の鮮度劣化抑制を目的とした保存方法について解説する． 容量化が進んでいるが，これと相反する省エネルギー性 2. 大容量とドア複数化による利便性の向上 能と，設置スペースのコンパクト化を考慮した技術開発 がますます重要となっている．また，最近の健康志向の 2.1　冷蔵庫の変遷 高まりから，保存中の食材の鮮度劣化抑制に対するニー 図２は当社冷蔵庫の変遷である．冷蔵庫の写真上部 ズも高い． に，当時の冷蔵庫の主な特徴を説明したキーワードを示 以上のように，「設置スペースは従来並みにコンパクト している．1932年に発売した冷蔵庫第1号機は，1ドア で大容量」，「高い省エネルギー性能」，「食材の鮮度劣化 で内容積は112 Lだったものが，1970年頃には冷凍室 の抑制」を製品開発コンセプトとし，日常生活の利便性 を分離した2ドアタイプで，内容積は200 Lを超えた． 1980年頃には野菜室が独立した3ドア冷蔵庫が普及し