高齢者の会食会の有効性に関する考察-事例調査を中心にして.PDFVIP

社会医学研究．第 26 巻 1 号．Bulletin of Social Medicine, Vol.26(1) 2008 原　著 高齢者の会食会の有効性に関する考察　－事例調査を中心にして Effectiveness of group meals of senior citizens associations Survey of one group 松井順子 Junko Matsui 奈良女子大学 Nara Women’s University キーワード：高齢者会食会、事業の有効性、因子分析、地域分散型、閉じこもり予防 抄　録 地域内の拠点に集まり一同で食事をする高齢者会食会は、栄養バランスのとれた食事の提供、交流・閉じこもり 予防、情報提供、他世代との交流など、多様な目的をかかげて多くの地域で開かれている。よって、同会は介護予 防一般高齢者施策のひとつに加えられても不自然ではない。しかし現状は、自治体の独自事業、社会福祉協議会の 独自事業、町づくり協議会の事業、ボランティア活動など、会の運営・実施主体やあり方がさまざまである。その 理由は、厚生労働省が介護保険サービスを中心に事業評価を求める方向にあるなかで、会食会は事業評価などなく、 当然、公費を投入する根拠も曖昧で、事業の位置づけや優先順位に基準がないことが大きな原因ではないかと考え られる。そこで本稿では、兵庫県芦屋市の社会福祉協議会が実施する会食会の参加者を対象に、事業に対する評価 や会への期待感などを調べて、事業のあり方と意義を検討することにした。結果は、市内 1 箇所の開催ではなく、 徒歩で気軽に参加できる地域分散型の会が望ましく、プログラムには「福祉・医療・介護」の情報提供が盛り込ま れることが期待されていた。参加に対する期待感について、潜在意識を調べた因子分析では、「食事機能期待因子」「刺 激期待因子」「交流期待因子」の３つが導けた。これらは先行研究や多くの地域で事業目的に掲げている「栄養バラ ンスのよい食事の摂取」「食べることで満足感を得て、場合によればそれが自己実現になる」「食生活に対する意識 の向上」「出かける場所の提供」「運動」「情報提供」「コミュニケーションの回復」「交流」などと対応しているとみ なせる。ならば、会食会は一定の目的を果たしていることになる。ただし、問題は多くの地域で掲げている「閉じ こもり予防」が現状では果たせていないことである。それを遂行するには、介護保険サービスに関する研究で述べ られているように、事業の実施者が閉じこもりがちな高齢者を把握し、それらの者へ参加を促すシステムを構築す る必要があることを本稿でも述べている。 キーワード：高齢者会食会、事業の有効性、因子分析、地域分散型、閉じこもり予防 Abstract Senior citizens meal gatherings, where people come together and share a meal in the community, are held in many areas with multiple aims: providing nutritionally balanced meals, communication and preventing people from closing themselves inside, providing information, and interaction with people of other generations. It is natural, then, to include these gatherings among general measures to prevent the need for care. Currently, however, various types of these gatherings are held by many different groups or organizations, including inde