日本の田舎は宝の山-日本農業研究所.pdfVIP

日本 の 田 舎 は 宝 の 山 ―耕作放棄地を活用した新たな農業経営の現状と課題― 講師 曽根原 久 司 氏 （ＮＰＯ法人えがおつなげて代表） ［平成27年６月25日開催］ はじめに １ 活動の拠点―山梨県北杜市 ２ 自己紹介 ３ 活動の紹介 質疑応答 参考資料 －as－ －at－－at－ 解 題 小 澤 健 二 第２回講演会は、「日本の田舎は宝の山」と題して、NPO法人「えがおつな げて」の曽根原久司代表が、ネットワ－ク構築による耕作放棄地の復元をベ－ スとする農業、林業の資源を活用した農村起業の実践経験を講演された。同法 人の農山村の潜在資源に着目した農村起業は、社会的にも注目されつつある。 曽根原氏は10数年の東京の仕事に見切りをつけて、バブル破綻後の1995年に 山梨県北杜市白州町に移住し、借入れた耕作放棄地を開墾して、自給的な生活 を始めた。地域との交流を深めるなかで、農村の地域資源を活かす新たな事業 を組織する必要性を痛感した。それが都市と農村の共生を目標とする2001年の NPO法人 「えがおつなげて」の設立につながるのである。 同法人の農山村資源を活用する農村起業のベ－スは、北杜市須玉町増富にあ る。「えがお」、須玉町、山梨県の三者で構造改革特区を03年に組織したこと に由来する。その特区で、限界集落の耕作放棄地１ヘクタ－ルを、「こどもフ ァ－ム」（都会の子供たちの農業体験学習）に活用した。翌04年に、都会の若 者に呼びかける遊休農地の開墾ボランティアを企画し、農村起業は本格化した。 都会の若者を対象とする開墾ボランティアは３年間続き、３ヘクタ－ルの耕作 放棄地を復元する成果を達成する。その農地をベ－スに様々な農村事業が試み られ、首都圏との交流の輪も広がったのである。 そのなかから、大手不動産会社の社会貢献事業(CSR)との連携も開始される。 不動産会社のCSRプロジェクトの理念と、「えがおつなげて」の目的が一致し、 両者の連携協定が08年に締結された。それにもとづいて、不動産会社の社員の 遊休農地の開墾、マンション居住者の田植え体験、間伐による森林再開発、そ れと一体化する国産材活用のワ－クショップ、などの企画が次から次へと実現 していった。「えがおつなげて」が企業のCSRプロジェクトの受け皿となり、 それが一つの道筋となる農村起業が展開されるのである。 企業との連携以前から、「えがおつなげて」は開墾ボランティアの企画を通 じて農業に関心を持つ若者をスタッフに採用し、耕作放棄地の復元と並行して 豆類、野菜、穀物、トウモロコシなどの地元特産物を生産する農場経営にも取 組んでいた。農場経営は、収穫した農作物を高値で販売するために、収穫物の －45－ 一部を原料とする食品加工、販売に関与するものである。 北杜市伝来の青大 豆、花豆を山梨県の老舗製菓業者と契約栽培し、和菓子製造に独自の工夫を施 すなどが、その一例である。豆類を中心に農業生産物を販売、加工と結びつけ る農業の６次産業化を、当初から志向するものである。 独自の農場経営と並行する企業との連携による農村起業の規模、範囲は、ネ ットワ－ク構築とも相乗して年を追って拡大している。2015年現在、連携する 企業は14社におよび、社員の農業体験を重視する大手広告会社の人事研修、別 荘管理会社の入居者向け家庭菜園の管理などに関連する事業も含まれる。 過疎地の耕作放棄地を復元し、その資源を活用する農村起業は、企業のCSR、 人事研修などの受け皿として、農業体験の環境を整備し、併せて周辺事業を開 発するものである。その業務は、農場経営、農地や森林地の管理、および