二次試験模擬答案用紙.docVIP

　私が「専門とする事項」として経験した業務の中から，以下の３つの業務について概要を述べ，業務３について以降に詳述する． ■業務１：堤防高が不足する河川の対策設計 　集中豪雨により越水した区間であるが，町道兼用の堤防天端に加え，背後地には町営住宅が建ち並び，用地制約が厳しい現状にあった．解決策として，パラペットのみで車両の衝突荷重に耐えうるように剛性防護柵を用い，道路の安全施設に治水機能を併せ持たせた． ■業務２：ホタル保全を目指した護岸詳細設計 　ゲンジボタルが生息する地域での河川改修において，その生息?生育環境を保全する必要性があった．施した解決策は，護岸表面の湿潤状態を保てるよう配慮し，多段式かごマット工に覆土を加えた上で，覆土流失を防止する目的でヤシ繊維シートを計画した． ■業務３：生態系保全を目指した護岸詳細設計 　護岸が崩落し，治水安全性の低い区間において，多様な生物の生息?生育にとって良好な河川環境を形成している河畔林やひまわり畑などを保全しつつ，現地発生材の現場内リサイクルなどにも配慮が必要な業務であった．これに対し，河畔林の根周りをフレキシブルに対応できるよう石張護岸とした．また，現地発生材は，根固め工（木工沈床）の中詰材として再利用した． ■経験業務3：多自然型川づくり護岸詳細設計 １．業務概要 (1) 期間：平成１５年７月～平成１６年２月 (2) 場所：熊本県鹿本郡鹿本町内　１級河川 (3) 内容：自然素材（石材?間伐材）とリサイクルによる多自然型川づくり (4) 役割：主任技術者として，治水対策?景観検討?リサイクル?環境配慮に関する提案?設計を担当した． ２．技術的問題点 　現地調査および資料収集を終えた段階で，明確となった解決すべき問題点は以下のとおりであった． ●河畔林を中心とした多様な生態系の保全…(ⅰ) ●河床洗掘の防止による治水安全性の確保…(ⅱ) ●現地発生材の現場内リサイクル　　　　…(ⅲ) ●周辺環境を形成するひまわり畑との調和…(ⅳ) 　(ⅰ)について． 低水護岸法肩付近にクルミやカワヤナギなどの樹木が点在し，川面へオーバーハングしている．これにより形成された木陰は，生物の生息?生育の場として保全すべき良好な環境を形成している． 　(ⅱ)について． 現況は，１ｔ型の根固ブロックを層積みにした低水護岸である．しかし，河床洗掘を受けて層積みが崩れ，治水安全性は低い状態にある． 　(ⅲ)について． この河川の高水敷に広がる90万本のひまわり畑は周辺環境の中核を形成している．この景観との調和は重要課題であり，現地発生材となる根固ブロックの現場内リサイクルを行う際は，コンクリートの見えない川づくりとする必要がある． 　(ⅳ)について． 　この河川に対しては，周辺住民以外の人々でも高水敷一面に広がるひまわり畑を景観イメージとしている．よって、このひまわりが持つやわらかいイメージとの調和は重要な課題である． ３．創意工夫した解決策とその根拠 　前述の課題に対し，私が提案した解決策は次の通り． 　●自然石空張工法＋根固工（木工沈床）　 　これに関する根拠を検討過程を追って以下に述べる． ■問題点(ⅰ)への対応 　河畔林の保全方法として，根周りを傷めないよう根の部分は護岸を施さない．しかし，この部分から護岸背面の吸出しを受けないよう留意すべきである．そこで，環境ブロックよりもフレキシブルに対応できる自然石空張護岸とした．そして，根周り２～３石分は，接着コンクリートを用い，確実に護岸機能を発揮させた． ■問題点(ⅱ)への対応 　基本的な河床洗掘対策を用い，最深河床の評価高を検討して基礎工天端高を設定すると，護岸法長が長大となり，安定性と経済性の面から好ましくない．…①そこで，根固工で河床洗掘に対応し，あわせて基礎工天端高を高くできるよう工夫した．…②さらに，施工性にも配慮し，基礎工と根固工の施工基面を揃えることで，極力，法長短縮を図った．…③また，基礎工天端と根固工上面の段差を解消するため，間詰捨石工を計画し，護岸工とのなじみが良くなるよう工夫した． ■問題点(ⅲ)への対応 　根固工は，計算上，重量3.4ｔ，施設幅３ｍが必要となったので，現地発生材である１ｔ型根固ブロックと連節ブロックを群体配置して所要重量を満足するよう，木工沈床工を提案した．木工沈床の１枠に，根固ブロック４個を配列し，間詰石として連節ブロックを再利用する手法である． 　 ■問題点(ⅳ)への対応 　現地表土を仮置きした後，覆土材とすることで，ひまわり畑の保全と調和を図った．また，石張り護岸の法勾配は現況相当の１：３とした緩傾斜型護岸であるため，植生の早期遷移が期待できる． ４．現時点での評価と反省?改善すべき事