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生物生産機械学　テキスト４ 第２章　施肥?播種?移植機 作物の栽培には，耕うん整地したほ場に肥料をまき，種子を播くまたは苗を移植することが必要である．肥料は播種?移植前に施用する基肥と，作物の生育中に施用する追肥がある．播種または移植時に同時に施肥する方法も普及している． 1．施　　肥　　機 　施肥機（fertilizing machinery）は，肥料を地表や地中に所定量散布するために使用される．これらには，地表散布，全層施肥，深層施肥あるいは種子や苗から一定の距離をおいてまく側条施肥がある．肥料には，粉末状，粒状，液状，ペースト状の化学肥料，あるいは堆肥や家畜のふん尿などの有機肥料があり，さまざまである．施肥機には，肥料の特性や散布法にあわせて，各種のものが開発されている．また，施肥機を搭載する車両も畑，水田などの路面の相違により，地上高や車輪形状が異なる． 　わが国では1888年に過リン酸石灰が，1910年に硫安が製造された．1950年以降化学肥料が大量に供給されるようになり，人糞尿を肥料として使用することは激減した．一方，動力耕うん機の普及により使役牛馬が激減し，1970年以降農地への堆肥散布は急減する．しかし，土壌構造を良好に保つために有機物の散布が見直されている．近年，肥料の利用率向上のため必要な個所に必要な肥料を散布する可変施肥技術が注目されてきたが，有機肥料は形状が不均一なため可変施肥が難しい． 1）堆肥散布機 　土粒子が数mmのかたまりになっているものを団粒といい，団粒の集まった状態を団粒構造という．団粒構造の土壌は，団粒内の粒子と粒子の小さな隙間に水が保持される．また，団粒と団粒の大きな隙間に空気が保持され，余剰水分はこの空隙を通して透過する．このため，保水性，通気性，透水性のよい土壌となる．団粒が形作られるためには，土中生物が有機物を分解して出す成分が必要で，堆肥の施用が不可欠である． 　堆肥散布機（manure spreader）は堆肥を堆肥舎からほ場まで運搬して，細かくほぐしながら均等に薄く，効率よく散布する機械で，堆肥を打ちほぐし，拡散しながら散布するビータ（beater）や，水平に回転する羽根付のスピナ（spinner）などの散布装置からなる．図5は，横軸ビータと2つのスピナを組み合わせた自定式堆肥散布機である．散布幅は堆肥箱幅の約2倍の2.5～3mである．縦軸ビータとスピナを取り付けた大形機種では8～12mのものもある． 2）粉末施肥機 　粉末散布機（fertilizer distributors）の代表は石灰散布機（lime sower）である（図）．畑作では酸性土壌を矯正するために，石灰散布が重要な作業である．石灰を詰める横長のホッパ（hopper）の下方に攪拌を兼ねたロータがあり，シャッタの開度を変えて散布量を調節する．ほ場作業量は，作業幅1.6m，作業速度5km／hで約0.65ha／hである．近年，ほ場の大形化に対応して1．5ha／hのものも使われる． 　　レポート（2009　山岸憲幸） ○粉末施肥機とは粉末化学肥料などを農地に撒くための機械。化学肥料を撒くと同時に耕起する。粉末施肥機の構造は粉末肥料を入れるホッパの下部にある、オーガ、コンベア、回転円板などの排出装置によって必要量を取り出す構造になっている。 ○粉末施肥機の性能：作業能率は作業幅1.6m、作業速度5km/hのとき約0.65ha/hである。農地10aに化学肥料を撒くのにかかる時間は約9分ほどということになる。 ○粉末施肥機の利用状況：茨城県北西部では輪作による肥料成分の土壌の集積や地下水へ　流出が懸念されている。そこで畝立同時施肥という局所施肥することにより環境への負荷を減らしている。 3）粒状肥料散布機 　化学肥料の代表は粒状肥料である．ブーム式散布機はホッパ下部の肥料繰出し装置（metering device）の回転数を変えて散布量を制御し，肥料は空気でブームに取り付けられた散布口に運ばれる．散布機は6個の肥料繰出し装置を持ち，7mのブームに12個の散布口が取り付けられている．散布量の調節が容易なうえ，真上から散布するため位置によるばらつきが少ない． 　図はブロードキヤスタ（broadcaster）と呼ばれる散布機で，ホッパの肥料を400～1,000rpmで回転するスピナ上に落とし，遠心力で飛ばす．散布幅は，単スピナで5～10m，複スピナのものでは10m以上である．施肥量は，ホッパ下のシャッタ開口部の面積と走行速度を変えて調節する．スピナの代わりに遥動式の筒（oscillating sprout）を使用するものもある．遠心力で飛ばすため距離により散布量が変わるので，散布端の部分が重なるようにして，