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19-20世纪医学史研究部会-pe.doc
19-20世紀医学史研究部会
第1回例会報告
19-20世紀医学史研究と?医療倫理?の医学史的基礎づけ
―― そのラフスケッチ
長島 隆(東洋大学)
はじめに
医療倫理の議論において、ニュルンベルク医学綱領とヘルシンキ宣言は原理的な位置を占める文書ということができる。ナチスの人体実験の対する批判から出発して、?人体実験?が医学の進歩にとって不可避のものであるという確認を行う格調高い文書であるといえるだろう。
だが、そのナチスの人体実験という深刻な問題を引き起こしたドイツはこの二つの文書はどういう扱いを受けているかをよく見るとこの二つの文書をドイツは拒絶したことが印象深い事実として浮かび上がる。実際、ドイツがヘルシンキ宣言の受け入れを行うのは実に1975年東京修正に至ってはじめてである。それはまさに?倫理委員会?という制度的提起があるが故にである。つまりドイツの拒絶というのは、このような倫理的規範で果たして医学者はナチスの人体実験にまで至る道を本当に拒絶できるのかという疑いである。だから、ドイツはこの倫理委員会というシステムの提起に基づきこの倫理委員会を法制化することによって医学が暴走することを回避しようとしている。
このドイツの動きを見ていると、実際最終的には98年医薬品(Arzneimittel)に関する法律を改正し、かつ医療産物(Medizinprodukute)に関する法律を作ることによって、制度的に完成させた。
このような動きは、まさに日本と異なっていることに留意しなければならない。またドイツが日本のようにガイドライン主義を取るのではなく、法律主義を取るのは、まさにナチズムにいたる?医学の暴走?にたいする歯止めは専門化主義の閉鎖性を打破するところにしかないという認識の下で出てきているといえよう。
だから?倫理委員会?においても外部委員こそがその命であり、むしろ専門化主義の打破がその課題であるがゆえに、徹底してこの外部委員の比率が問題となる。
このような動きは、われわれが見る以上に「ナチズムによる人体実験」はドイツの医師集団にとっては深刻なものとして受け止められているといえよう。しかもそれは医学の本質と不可分に結びついているという認識がその基本にある。そして医学はまさに学問である理由はまさにその社会政策に基づくものであり、医学史は制度史として展開されなければならないという認識があるのではないか。
以下では、まずドイツの医療倫理の原理問題から出発して医学史的考察の必然性について検討することを目的とする。結論的に言えば、ドイツにおいて?医療倫理?問題は最終的に?医師職業規則(Berufsordnung)?として定着し、歴史的にもその時期の議論を反映させてくるところに特徴がある。そして先に述べた法律による規制を好むのは、まさに、この?医師職業規則?を支える制度的保障の問題にかかわるからである。
1.「人間の尊厳」の背景
1)ドイツの生命倫理の議論がアメリカバイオエシックスにたいする批判的挑戦を行っているが、その基本的な思想は「人間の尊厳(Menschenwürde)」である。簡単にまとめれば、この「人間の尊厳」は第1に思想史的文脈から正当化される。すなわち、ルネッサンスを経て、中世のキリスト教思想からストア学派の議論に至るものである。第2に、ドイツ基本法第1条をあげる。大体ドイツの論者はこの二つの点を上げる。それにたいする批判は、大体「無内容、空虚」という批判に加えて、特殊キリスト教的な議論というのが大まかな批判である。
だが、よくこれを検討していくと果たして「無内容、空虚」といえるかどうか。そもそも現在ユネスコの生命倫理の原則の改定論議では、少なくとも、この「人間の尊厳(Human Dignity)」が、原理的な位置を占めるとして議論されていることに注意したい。「無内容」にしてはあまりに大きな影響力を持っているのである。それではどのように内容は検討されるべきか。それを先の二つの論拠に即して検討しておきたい。
思想史的文脈からの正当化について
まずこの点で注意しなければならないのは、この「人間の尊厳」が遡及的に明らかにされることである。すなわち、今日ドイツ基本法に定着している「人間の尊厳」の理論的根拠は、キリスト教はもちろんであるが、それを越えてギリシアにまでさかのぼる議論だという主張の仕方である。したがって、このときこの思想史的文脈に基づく「人間の尊厳」の主張は「神の似姿としての人間」にとどまることなく、もっと自然と人間との同一性を確認する方向を取ることになるだろう。したがって、この「人間の尊厳」がギリシャ以後キリスト教に取り上げられて今日に
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