神経学会入会推進アンケートの解析結果.pdfVIP

56：866 *1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 日本神経学会，神経内科講座，新人勧誘，卒前教育，アンケート調査 日本神経学会（以下，学会）の会員数は 2016 年 5 月の時点 で約 8,500 名であるが，非医師の会員や高齢の会員も含まれ ることから，現役で臨床や研究，教育の現場にいる神経内科 医の数は 8,000 名を下回る．神経内科医は，長期的にみると その数は増加傾向にあるものの，最近は必ずしも増加してい るとは言えず，神経内科医は本邦における需要を満たすだけ の数を有しているとは言いがたい．特に診療現場にいる神経 内科医では多忙を極める者も多く，疲弊した神経内科医が現 場から離脱する事態も稀ならず存在し，神経内科医不足に拍 車をかけている． 学会の調査によると近年の学会への入会者数も年平均 200 名程度であり（Fig. 1），増加傾向にあるとは言えず，むしろ 会員数は頭打ちに近い状況ともいえる実態がある．神経内科 医としての実働年齢については様々な例が挙げられるが，仮 に若い医師が初期研修医終了後すみやかに学会に入会し 65 歳定年まで学会に在籍すると仮定すると神経内科医としての 日本神経学会への毎年の入会者数． 日本神経学会事務局での調査では 2000 年～2012 年の学会入会 者数は毎年 200 名前後で推移しており，増加傾向にはない． *Corresponding author: 北里大学神経内科〔〒 252-0374　相模原市南区北里 1 丁目 15 番 1 号〕 1）北里大学神経内科 2）山王メディカルセンター神経内科 3）東北大学神経内科 4）岐阜大学神経内科 5）久留米大学医学部内科学講座呼吸器?神経?膠原病内科部門 6）国立病院機構あきた病院神経内科 7）熊本市民病院神経内科 8）亀田メディカルセンター神経内科 9）東海大学神経内科 10）熊本大学神経内科 （Received August 16, 2016; Accepted October 19, 2016; Published online in J-STAGE on November 25, 2016） doi: 10.5692/clinicalneurol.cn-000949 56：867 神経学会と関連分野の学会の会員数． 左）脳に関係する学会の会員数．右）内科系の各学会の会員数． 実働は 40 年弱となる．毎年の学会入会者が現状のように 200 名であると仮定すると，学会会員数は 8,000 名前後から大き く増えることはないと試算することができる．しかるに近年 では治療できる神経疾患が増えるにつれ，またマスコミを通 じて神経疾患についての情報が広く周知されるにつれ，神経 内科医への需要は日増しに高まっており，現在の学会会員数 では本邦の神経疾患患者のニーズにこたえることは不可能で あると言えよう．Fig. 2（左）に神経関連の学会会員数を示す が，神経内科は精神神経科ならびに脳神経外科に比しても学 会規模は小さい．また Fig. 2（右）には内科系各学会の会員 数を示すが，神経学会の規模は内科系各科の中でも小さいも のであることがわかる．昨今の神経内科がカバーすべき臨床 の領域は広範であり，決して消化器や循環器の後塵を拝する 立場ではないとの考え方もあるが，医師数（会員数）という 点では大きく水をあけられているのが現実である． 日本神経学会卒前?初期臨床研修教育小委員会では，過去 に卒後教育?卒前教育に関する調査を行ってきたが 1）～8），神 経内科医の入局や勧誘に関する調査は行われてこなかった． 今回，同委員会では，神経内科への入局（学会入会）推進の ための現状把握と打開策を模索するためにアンケート調査を 実施した．このアンケート結果について分析を行ったので 報告する． なお「神経学会への入会」と「神経内科医局入局」は厳密 には異なるわけであるが，現在の医療制度?教育制度を考え ると両者はほぼ同義であるので，本論文では用語として両者 が混じることをご容赦いただきたい． アンケートの対象は全国の医学部を有する大学病院の神経 内科講座，ならびに学会の教育施設とした．前者へのアンケー ト内容は Table 1 に，後者へのアンケート内容は Table 2 に示 す．回答は記名方式としたが，記名に同意されなかった施設 は無記名も可とした．アンケートは対象施設へ郵送し，時期 は 2014 年 12 月から 2015 年 2 月に実施した． I．調査対象施設の概要 今回の解析対象は，調査依頼した教育施設（教育施設?准 教育施設?教育関連施設を含む）のうち，2014 年 12 月時点 で医学部を有する大学（以下，大学）80 施設中の