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記念講演 「整形外科医療の進歩」 九州大学大学院医学研究院 整形外科研究分野教授 岩本 幸英 1. ただいまご紹介にあずかりました九大整形外科の岩本です。九州大学病院別府病 院の開院、誠におめでとうございます。また今回の開院に伴い、整形外科が新設 されたことを大変うれしく思っております。本日は、整形外科以外の先生に「整 形外科」を理解していただくために、また、九大整形外科同門である大分大学? 津村教授、旭川医大?竹光名誉教授をはじめ、大分県内の整形外科の先生が多数 お見えなので、ご挨拶をかねて、「整形外科医療の進歩」というタイトルで講演 させていただきます。 2. 今回、新設された整形外科に赴任したのは、九大整形外科同門の土井俊郎准教授、 東野修助教、樽角清志医員の3 人であり、脊椎外科を専門としております。九大 別府病院整形外科をどうぞよろしくお願いします。 3. 今回赴任した3 人の整形外科スタッフは、102 年の歴史を有する九大整形外科の 伝統の中で育ちました。そこで、本講演においては九大整形外科の歴史について ご紹介します。また、幅広い整形外科学分野の中で、関節外科、脊椎外科、骨軟 部腫瘍の医療の進歩についてご紹介したいと思います。 4. 九州大学整形外科学講座が開設されたのは、1909 年のことでした。3 年後の1912 年に住田正雄（すみたまさお）先生が、初代教授に就任されました。スライド右 手には、講座開設当時の九大医学部正門、および九大病院玄関を示しています。 5. 第2 代教授の神中正一（じんなかせいいち）先生は、わが国の整形外科学を確立 した大恩人として、現在でも全国の整形外科医から尊敬されています。歴史に残 る数々の業績を残されましたが、そのうちのひとつがわが国における最初の本格 的な整形外科教科書である「神中整形外科学」の執筆です。昭和１５年に初版が 出版されるやいなや、本書はたちどころに整形外科のバイブルとよばれるように なりました。全国の整形外科医、医学生は皆、「神中整形外科学」を読んで整形 外科を勉強したのです。 6. 九大整形外科では、教授の代は変わっても「神中整形外科学」の名前を残し、改 訂に改訂を重ねて教室の伝統を守り続けています。スライドは、平成16 年に杉岡 先生の監修、私の編集で発刊した第4 回改訂版です。その後7 年が経過したので、 現在新たに改訂作業を行っていることころです。 7. 神中先生の後、天児民和（あまこたみかず）先生が第3 代教授に就任されました。 天児先生は、整形外科の真のリーダーとして国際的に活躍されたほか、総合せき 損センターの設立などにも尽力されました。4 代目の西尾篤人（にしおあつと） 教授は、数々のオリジナルの手術を開発し歴史に名を残されました。第5 代の杉 岡洋一（すぎおかよういち）教授は、世界に有名な股関節外科医であり、九大総 長として全学をリードされました。このように、歴代の九大整形外科教授によっ てわが国の整形外科学は確立され、世界のトップレベルに導かれたのです。杉岡 先生の後を受け、1996 年からは私が教室を主宰させていただいています。 8. それでは、関節外科の進歩についてお話をさせていただきます。 9. 初代?住田教授、２代?神中教授時代には、細菌感染や結核による関節強直や病 的脱臼が町に溢れ、整形外科の主な治療対象となっていました。したがって当時 の関節外科の主流は，関節強直に対する関節形成術でした。すなわち、現在の関 節外科よりもはるかに重篤な症例が治療の対象となっていたのです。左は，初版? 神中整形外科に掲載された遊離筋膜を用いた膝関節形成術の方法，右は強直膝に 対して神中先生が関節形成術を行い、正座が可能になった症例を示しています。 素晴らしい手術成績が評判となり、地元だけでなく全国各地、アジア大陸からも たくさんの患者さんが押し寄せました。現在、九大病院はアジアに開かれた病院 への発展を目指していますが、九大整形外科は設立当時から国際化が実現されて いたのです。 10. クローム化した自家大腿筋膜、即ちJK 膜を中間挿入膜として用いた関