裸足で走り切った逸話が残る。アベベは東京で連覇を果たし、異色ではなく偉業で 160年のローマ五輪、マラソンはエチオピア.pdfVIP

朝日新聞「天声人語」２０１２．８．７． １５４．義足ランナーのオスカー?ピストリウス選手と 補そう具のヨシダ （傍線?タイトル：吉田祐起引用） １９６０年のローマ五輪、マラソンはエチオピアの無名選手アベベ?ビキラが制した。 裸足で走り切った逸話が残る。アベベは東京で連覇を果たし、異色ではなく偉業で オリンピック史に刻まれた▼ロンドンでも「裸足」が注目されている。義足ランナーとし て初めて五輪に参加し、４００メートルに出た南アフリカのオスカー?ピストリウス選手 （２５）だ。準決勝で敗れはしたが、同走の選手が敬意の印にゼッケンの交換を求め てきた。９日にはリレーを走る▼両すねの骨を欠いて生まれ、程なく膝（ひざ）から下 を切断した。「私の義足は靴と同じ」。１０代から短距離を磨き、北京パラリンピックで は敵なし。その走りに、工業デザイナーの山中俊治（しゅんじ）慶大教授は「究極の 機能美」を感じた▼「ブレード（板ばね）の弾力を巧みに使って送りだされる高速の足 元は、その薄さゆえ に走行中はほとんど映像から消えてしまう。飛んでいるようにさ え見えた」と、近著『カーボン?アスリート』（白水社）にある▼肉体との一体感は猛練 習のたまものだろう。称賛の一方で、義足は加速装置ではないのか、といった批判も くすぶる。「道具によるドーピング」の声に抗し、彼は出場規定のハードルを幾つも越 えてきた。たどり着いたのがロンドンだ▼１０年前に亡くなった母親の言葉がいい。 「オスカー、敗者とは最後にゴールする人じゃない。はなから出場を諦めちゃう人を 言うんだよ」。五輪スタジアムを包む喝采は、なるほど、勝者に向けた響きである。 吉田祐起のコメント： 義足と言えば、似て非なるもの、それは私が両足に使用している「補そう具」がありま す。両脚はあるが、間節が麻痺していることから利用するのが補そう具。かくいう私 の場合は、左足の踵麻痺による膝下の短いもの。右足膝から下の麻痺による腿付 け根からの長いものです。 オスカー?ピストリウス選手のような美談は持ち合わせませんが、私の場合のエピソ ード。６０歳を過ぎて長年のステッキ使用で体重を左のそれに掛けたことが原因で左 肩に激痛が生じたのが機になって初めて「身体障害者」手帳の認定を受けて「補そ う具」を身に付け始めました。認定医師が「どうして今までに障害者手帳の交付を受 けなかったのですか!?」と怪訝がられたもの。経営者の自負がその恩典を受けること を許しませんでした。 多くのエピソードがある中で、１９９３年に「単身一ヶ月間米国取材旅行」を前にした エピソード。ステッキなしのウォーキング訓練を毎朝続けました。それはすざましい努 力でした。おかげで、滞米１か月間はステッキ抜きで取材生活をおくりました。 たった一度だけのスッテンコロリン体験は、かのケネディー大統領暗殺のビルでのこ と。ドア前のマットに足を取られて前のめりで尻もちならぬ、前のめりで手をついたも の。でも、日頃のストレッチング体操のお陰で、柔軟な身体が転倒でなく、前のめりで 手を突いて済むという芸当を可能にしたものです。 彼の母親の言葉「敗者とは最後にゴールする人じゃない。はなから出場を諦めちゃう 人を言うんだよ」に対する私の母の言葉は、「身障者のお前は人の何倍か努力して 初めてイーヴン（対等）になるんだよ」でした。「ポリオに罹る人は優秀な人物。アメリ カのルーズヴェルト大統領や、ヤンキーズのルー?ゲリックがそれだよ」と、よく聴かさ れたものでした。 と、こんなエピソードが書けるのも、私自身が身障者であることです。芸は身を助く、 ならぬ、書くネタを持つ、ではあるでしょう。 Back to 私が選んだインタネット情報集