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基礎からわかる倫理 41 第７講 ソクラテスの思想 １?「善く生きる」ための普遍的な知恵（絶対的真理）の探求 ソフィストの個人主義的な考え方に対して、人間の生き方の普遍的な原理を探求した。 ソクラテスに著書はなく、弟子のプラトンの著書の中に登場するソクラテスを知ることしか できない。ソクラテスの思想を明確に表現（言語化）したのがプラトンとも言える。 若いころより、しばしばダイモン（心の内から呼びかける守護神）の声を聞いた。 「ソクラテス以上の知者はいない」（デルフォイの神託） →自分は知者ではない（無知である）と悩む 「汝自身を知れ」（アポロン神殿に刻まれている文言） →無知の知（無知の自覚「自分が無知であることを知っている」） こそが真理探究の出発点である ＝ 人間は常に真の知恵を探求し続ける ソフィストのように知者といわれる人が、実は物事の本質を知らないことに比べれば、 自分は「無知を自覚」している分、彼らよりも上（知者）であることに気付く。 ＊問答法（対話法?助産術?産婆術） 相手と問答を繰り返し論理の矛盾をつくことで無知を自覚させ、相手が真の知恵を見出す ことを手伝う（知恵や真理を教授しているのではない） 自分の無知を自覚することで「知への憧れ」が起きる（真の知を知るための出発点） 「○○とは何か？」と問い続ける 矛盾をついて相手が「無知の知」に至る手助けをする デルフォイとは古代ギリシアの 聖地で、予言の神アポロンを祀 る神殿がある。 アポロン神殿をデルフォイ神殿 ともいう。 第７講 ソクラテスの思想 42 「知への愛（愛知）」（フィロソフィア）が今日でいう「哲学」（フィロソフィ）の語源。 →フィロソフィを「哲学」という日本語に訳したのは明治時代の西周 ２?魂への配慮 ＊魂（プシュケー）を善き方向に導くためには徳（アレテー）を身につけるべき ＊徳（アレテー）…徳?優秀性?卓越性?備わる能力のこと ＊知徳合一（知行合一） 魂（プシュケー）のそなえるべき徳（アレテー）が何であるかを知れば （徳は知である?主知主義） ＊福徳一致 正しい生き方（幸福）へと導かれる 「善く生きる」とは、「上手に世渡りする」（または富?名誉?健康などにのみ気を配る） という処世術ではないと批判 善美のことがら（善いことは美しいこと）を追求することが大切である ３?ソクラテスの死 「国家の神々を認めず青少年を惑わせた」とし裁判にかけられる →裁判では市民の堕落を堂々と批判（弟子プラトンの著書『ソクラテスの弁明』） →死刑判決 友人クリトンたちによる国外逃亡のすすめを断り法に従って毒杯を仰いで刑死 「ただ生きるということではなく、善く生きるということである」 「悪法も法なり」として法に従う市民としての生き方を示す （弟子プラトンの著書『クリトン』） 自らの魂に徳が備わるよう気づかい世話をする「魂への配慮」が必要である 真の知者は神だけであり、人間の知恵の最高のあり方は、無知の自覚から発する 「知への愛」（フィロソフィア）にある。 基礎からわかる倫理 43 以下に示す文章の に当てはまる人物は①～④のうち誰か。 [2009?センター?本試験?一部抜粋] ギリシアでは，「大切にしなければならないことは，ただ生きることではなくて，よく生き ることなのだ」という言葉で知られる が，「不正をなすこと，不正をし返すこと，… …これらはいずれもいついかなる時にも間違っている」と言っている。 ① クリトン ② ゴルギアス ③ ソクラテス ④ プロタゴラス ソクラテスの人生は，彼の友人から伝え聞いたデルフォイの神託によって決定づけられた と言われている。その神託の内容として最も適当なものを，次の①～④のうちから一つ選べ。 [2008?センター?本試験] ① ただ生きるのではなく善く生きよ。 ② 徳は知にほかならない。 ③ おのれの無知を自覚せよ。 ④ ソクラテス以上の知者はいない。 対話相手に自らの無知を自覚させるためにソクラテスが用いた方法の説明として最も適 当なものを、次の①～④のうちから一つ選べ。[2012?センター?本試験] ① 相手との問答を通して、相手の考えの矛盾を明らかにするという方法。 ② 神託に謙虚に従い、魂がそなえるべき徳に関する知へいざなうとう方法。 ③ 善に関する真理を教授し、知を愛することを手助