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シンガポールの街路空間マネジメントに関する研究 守山　健史 1.はじめに 割、空間の特性を調査し、3地区を比較分析することで、 1-1　研究の背景 各地区の街路空間の特徴や課題の整理を行う。 (1)多民族国家シンガポールの賑う街路 1-3研究の方法 　近年、シンガポールでは、観光資源の観点から街 　分析は、シンガポールの街路空間に関す る歴史・法 路空間における「地域性」が重要視されるようにな 制度・政府の役割の整理、歴史地区 3 地区における り、行政の一方的な管理体制から民間組織も巻き込ん 街路空間の機能・役割・空間の使われ方の解明、民間 だ官民一体での街路空間マネジメントへの移行が模索 マネジメント組織の役割の把握の順に行う。調査は、 されている。その中で、計画法（Planning ACT）に基 2009 年 11 月 2 日～ 6 日、同 12 月 17 日～ 24 日の 2 回 づく保存ガイドラインにより指定された歴史地区 4 地 に渡って行った文献調査、ヒアリング調査、測量調査、 区注 1） の内、植民地時代に中国系、マレー系・アラブ ビデオ・写真観察調査を基にまとめる。ヒアリング調 系、インド系住民の居住地であった、チャイナタウン 査は、歴史地区 3 地区の民間マネジメント組織とシン （Chinatown）、カンポングラム（Kampong Glam）、リト ガポール観光庁の代表者に対して行った。 ルインディア（Little India）の 3 地区（図 1）では、 1-4研究の対象地 現在、政府の政策や民間マネジメント組織の働きによ 　シンガポールは東南アジアの中心に位置し、1965 年 り地域性豊かな街路空間が維持・創出されている。 にマレーシアからの分離独立後、急速な経済発展を遂 (2)地域性豊かな街路空間のマネジメント手法 げ、現在は国際金融都市として栄える人口 483 万人、 　一方、アジアの多くの都市では、賑う街路空間が、 面積 710 平方 km の都市国家である 1)。研究の主な対象 行政のコントロールなしに、民間組織の自治管理によ 地は、歴史地区 3 地区において、保存ガイドラインに り維持されているケースが多く見られ、官民一体での より、文化や建築保存の最重要エリアとして指定され 包括的なマネジメント方策の整備には至っていない。 ている中心エリア(Core Area）である。 シンガポールの官民双方の働きによる街路空間マネジ 2.政府主導の街路空間マネジメント メントの実態と課題を明らかにすることが、アジア都 2-1 歴史地区の街路空間 市における地域性豊かな賑う街路空間の持続的なマネ (1)街路の歴史的変容2) ジメントを考える上で重要であるといえる。 　植民地時代、民族居住地内の街路では、洗濯物など 1-2研究の目的 が街路に張り出され、露店商が商売を行 うなど、私的 　本研究では、シンガポールの街路に関する法律や政 占用が行われていた（図 2）。しかし、1888 年の連続歩 府組織の役割、歴史地区 3 地区（チャイナタウン、カ 廊における私的占用物の撤去政策や、1960年代の屋台・ ンポングラム、リトルインディア）の民間マネジメン 露店全面撤去政策など、街路空間の私的占用とそれに ト組織の役割を把握し、シンガポール特有の街路空間 対する政府の規制と撤去が繰り返