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49 香港,マカオにおける離婚制度の比較研究 高 橋 強 は じめに 1.香 港 におけ る離婚 制度 1.マ カオにお ける離婚制度 ㎜.香 港,マ カオにお ける離婚 制度 の比較 N.結 び は じめ に 1980年代 に入 り,大 き く進展 した 中国の改革 ・開放政策 の下,モ ノ ・ヒ ト ・ カネ の交流拡大 を進 め なが ら華南経済 圏発展 の大 きな立役者 となった香港,マ カオは,今,大 変 な社 会 的経 済 的発展 を遂 げ るに到 ってい る。 その大 きな社会 変動 の 中で離婚 問題 に焦点 を当てて見 る と特 に,90年代 に入 り,両 地での離婚 件 数 の急 増 は社 会 の大 きな話題 とな って い る。香 港 で は91年に離婚 件 数 が 6,295件で,離 婚 率 が始 めて1%・を越 え1.11脇とな り,ま たマ カオで も91年に 離婚件数 が始 めて100件を越 え163件(離婚率 は0.28臨)となった。 その後 は増加 の一途 をた どってい る。本稿 はかか る現象 のその社会 的背景 を分析 しよ うとす る もので はな く,そ の紛争処理 のメカニズムを解 明す る所 に 目的があ る。 とい うのは,両 地 は基本 的 には中国人社会 であ るに もかかわ らず,香 港 は英 国法 に よ り又マ カオ はポル トガル法 に よ り各 々管理 されて きてお り,離婚制度 におい て何 か衝突 的な現象 を発 生 させ てい ないか どうか とい う想像 は容易 に生 じて く るか らであ る。更 に又 両地 は各 々 中国返還 とい う,中 国の法体系 の 中に組 み込 まれ よ うとしてお り(香港は97年に,マ カオは99年に),両地 にお け る同制度 の本 質 を検討 してお くこ とも大 きな意 味 を持つ と考 え られ る。本稿 は方法論 的 には 比較研 究 の方式 を通 し検討 を進 めてゆ くこ とにす る。 SO 1.香 港 にお ける離婚 制度 (1)その生成 と発展 香港 において英 国の法律が採用 されたのは,1844年になってか らの ことであ る。1841年英国が香港 を接収 し管理 をした時,英 国政府代表 は次のように宣言 した。即 ち 女「王陛下の指示があるまでは,香港 島の原住民お よび香港 に居住 す る全ての中国人は,鞭打 ちの刑罰 を除いて,中 国の法律お よび慣習に拘束 さ れ る。」(第1号公告)と。1844年,香港 は最初 の最高法院法例 を制定 し,その 第5節 で 「1843年4月5日,香港で立法機構 が設立 された後 は,現行 の英国の 法律 を香港で実施す る。 しか し現地の情況 あるいは住民に適合 しない もの,及 び前述立法機構 により別に立法化 された ものは除 く。」 と規定 した。 この よう な歴史的背景か ら,香港の法律 は英国の慣習法 をその根拠 とす るが,も し英 国 の法律 を援用す ることによ り不公平あるいは威圧す るような現象 を引 き起 こす な らば,香港の法廷は1841年当時香港で有効であった中国の法律お よび慣習 を, 引用 し判決を下す ことができた。従 ってその後1世 紀余の長 きにわた り,香港 の法制度 は中国 と英国の 混「合体」 となった。特 に家族 に関係す るような中国 の法律お よび慣習 は,香港 の法律 の中では重要な地位 を占めていた1)。 1852年頃になると,多 くの英国人が香港 に来て経済活動 に従事す るようにな りその必要性か ら,同年3月 に 香「港婚姻条例」が制定 された。但 し同条例 は 英国人 の為 の ものであった。 しか し1875年には,中 国人の人 口が増加す るに従 い香港政庁は同条例 を改正 し,中国人 も包括で きるように したが殆 ど無縁の も のであった。 当時の英国では,離婚原因は姦通のみであった。 しか も妻が訴 え る場合 には,夫の姦通 に加 えて一定の事 由(近親婚的姦通,姦通をともなう重婚等) を立証 しなければな らなかった2)。一方