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第2章-2 塩化銅水溶液の電気分解
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マイクロスケール実験による塩化銅水溶液の電気分解
概要
中学校理科では,水の電気分解実験と同様に,イオンは扱わず,陰極,陽極の生成物(銅,塩素)のみに着目する.塩化銅水溶液の電気分解は「分解によって生成する物質は,水素や酸素のような気体だけではなく,金属の場合もある」,「物質を分解すると,それ以上分解できない物質になる」ことを示し,「それ以上分解できない最小の粒=原子」へと展開する(石川勝也ら,2005).従来の方法では,電解槽にビーカーを電極は炭素棒を使用している.陰極に付着した銅は,薬さじや試験管の底で強くこすり,金属光沢により銅であることを確認する.一方,陽極に発生した塩素は,臭い,漂白作用により確認する.この漂白作用は,塩素が水に溶けて生成する次亜塩素酸HClOの酸化力による.
塩素ガスは毒性が強く取り扱いに注意が必要である.今回はマイクロスケール実験による塩化銅水溶液の電気分解では,発生する塩素ガスは極めて少量であり,実験上の安全に配慮している.また,塩素の検出にはヨウ化カリウムデンプン溶液を利用した.
単元
中学校理科 第1分野「化学変化と原子?分子」
実験時間
50分
準備
12セルプレート(IWAKI)
炭素棒(5㎜φ,長さ30㎜)2本
USB電源装置(直流電圧約5V)
試薬
塩化銅(Ⅱ)二水和物水溶液(0.1mol dm-3)
ヨウ化カリウムデンプン溶液(塩素の検出に使用)
【ヨウ化カリウムデンプン溶液の調製法】
(1)可溶性デンプン0.5gに蒸留水2㎝3を加え攪拌し,さらに熱湯100㎝3を注ぐ.
(2)(1)の混合物に,ヨウ化カリウム5gを加える(これがヨウ化カリウムデンプン溶液となる).
(3)濾紙にヨウ化カリウムデンプン溶液を浸して乾燥させると,ヨウ化カリウムデンプン紙となる.
実験方法
(1)セルに塩化銅(Ⅱ)二水和物水溶液を約3㎝3入れる.
(2)炭素棒電極を挿入し(図1),5V直流電圧を印加する.
電極同士の接触を防止するため,電極の固定には透明の塩ビシートを利用する.なお,セルの端に電極をつけ,ミノムシクリップで挟み込むと固定の必要はなくなる.
(3)陽極,陰極での変化を観察する.
(4)ヨウ化カリウムデンプン紙を陽極に近づけ,変化を見る.
(5)陰極に生成した銅を濾紙の上に削り取り,薬さじ,もしくは試験管の底で強くこする.
図
図1 炭素棒電極を挿入した塩化銅水溶液
を
結果および考察
電圧を印加すると,陽極では塩素が,陰極では銅の生成が観察できた(図2).陽極にヨウ化カリウムデンプン紙を近づけるとヨウ素デンプン反応を示し,青色を呈した.塩素特有の臭いもあり,これにより陽極に移動した塩化物イオンCl-が電子を放出し,塩素が生成したことが確認できた(図3).陰極に付着した銅は,濾紙の上に削り落とし,試験管の底や薬さじで強くこすると金属光沢が顕著に現れた(図4).電極に付着した銅は,実験後,紙やすりで削り取るか濃硝酸で溶かすとよい.電極にステンレスなどの金属を用いると,陽極で生成する塩素によって電極が腐食されるため,この実験には炭素棒電極もしくは白金電極が適している.良質の炭素材は電気の良導体で,化学的安定性が高いので,白金などの貴金属とともに不活性電極としてしばしば用いられる.炭素電極は白金に比べ,広い電位窓(potential window)をもつ利点がある.乾電池の正極に用いられているグラファイトや緻密で硬いガラス質炭素(商品名:グラシーカーボン)などがよく用いられる.シャープペンシルの替え芯,鉛筆の芯は,目的次第では便利な炭素電極として利用できる(玉虫,高橋,2003).
塩化銅(Ⅱ)二水和物水溶液の濃度は0.1mol dm-3とした.この濃度は,従来の約0.76 mol dm-3(10%),荻野?東海林による実験(荻野,東海林,1998)で用いている約1.52 mol dm-3(20%)の1/8~1/15であるが,電極での生成物の観察,確認も十分に可能な濃度である.低濃度,少量の試薬で実験できることは,マイクロスケール実験の特長でもある.電気分解により,水溶液中の銅イオンが減少し青色が薄くなるのを確認するため,電気分解前後の水溶液を比較した(図5).
陽極に生成した塩素は,漂白作用によっても確認できる.陰極付近の水溶液には塩素が溶解し,Cl2+H2O?HCl+HClOの平衡状態となっている.この塩素水(次亜塩素酸)には漂白作用があるので,別のセルに塩素水を取り,水溶性のインクを滴下すると,色素が消える(図6).
図
図3
ヨウ化カリウムデンプン紙(右下)による塩素の検出
図5
図5
左:電気分解後 右:電気分解前
図4
生成
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