『総合改修』の効果と課題について.PDF

既存建築物に対するサステナブル建築への取り組み 『総合改修』の効果と課題について 平成 23 年 6 月 14 日 社団法人 日 本 建 設 業 連 合 会 建 築 本 部 建築のストック型社会の到来に向けて はじめに 日本建設業連合会は、平成23 年 4 月 1 日に、日本建設業団体連合会・建築業協会・日本土木 工業協会という 3 つの団体が合併して誕生した業界団体です。 そのうち、建築業協会は、平成 20 年 2 月に五つの柱から成る新たな 「BCS 行動計画」を定め、 その一つの柱として「サステナブル建築による地球環境への貢献」を掲げました。このサステナ ブル建築については、平成 20 年度に設置したサステナブル建築特別委員会において、環境に配慮 した設計・施工を推進するとともに、CASBEE （建築物総合環境性能評価システム）の利用促進 に努め、新築建築物への対応は一定の成果を収めています。 そして同協会は次なるステップとして、既存建築物に対するサステナブル建築に取り組むこと とし、平成21 年 10 月にその具体的な手法として『総合改修』という考え方を提起、翌年 4 月に サステナブル建築企画部会（清水宣治部会長：大成建設㈱取締役 常務執行役員都市開発本部長） を立ち上げ、7 月にはその傘下に総合改修専門部会を設置しました。 本報告書は、同専門部会が、オフィスビルを対象としてビルオーナーのニーズに応じた複数の メニューを提示しながら、条件に応じて高い付加価値を提供できる総合改修のあり方を考察し、 その効果の検証と課題の解決策について検討を行った内容を取りまとめたものです。本報告書を 通じて、オフィスビルの改修にあたって、総合改修がビルオーナーの選択肢の一つとして位置づ けられることを期待しています。 『総合改修』の考え方 これまでの既存建築物における一般的な改修は、耐震改修・省エネ改修・バリアフリー化とい った個別課題ごとに実施されるケースが大半を占めていました。これらのなかには、省エネ改修 として効果の見えやすい機器の交換のみが行われ、数年後にはシステム全体の更新が必要になる 等、結果として必ずしも建築物全体の長寿命化に結びつかない事例も散見されています。 今回、同協会が提案した総合改修とは、従来は課題ごとに行われてきた改修を一括して実施す ることにより、総コストの低減・総工期の短縮を図りながら、建築物の資産価値の向上を目指す ものです。しかしながら、建築物の所有者の立場からすると、改修時においては、課題ごとの個 別改修と比べて、工事支出額が増え全体工期も長期化することから、多額の資金調達を要し長期 にわたる休業を余儀なくされる等の問題も生じることになります。そのため、総合改修について は、改修時におけるコスト面・工期面の効果だけではなく、改修後に建築物の品質・資産価値が 向上することにより、所有者が享受する大きなメリットを明示する必要があります。 期待される効果と課題 総コストの低減・総工期の短縮 総合改修は、個別に改修を重ねるのではなく一括して改修を実施することから、管理費をはじ めとする各種費用の圧縮が図られ、総コストの削減が可能になります。同様に工期についても、 仮設等の準備工事の頻度を抑え、効率的に多様な改修工事を一括して進めることができるため、 - 1 - 建築のストック型社会の到来に向けて 総工期の短縮にも繋がります。反面、多額の工事費用を調達する必要が生じ休業期間も長期化す ることから、金利コストの増額・休業に係る機会損失の増加が懸念されます。≪概念図参照≫ 本報告書では、仮想の建築物を設定したうえで、一括して改修工事を行う場合にビルオーナー が享受できるコストメリットについて、直接工事関係費に限定して検証を行っています。 総合改修については、個別改修を重ねる場合と比較して、建築物全体の耐用年数の延長を