肥料原料の安定確保に関する論点整理 平成 22 年2 月26 日.PDFVIP

肥料原料の安定確保に関する論点整理 平成 22 年 2 月 26 日 1 背景 肥料は、農業生産における重要な資材であるものの、化学肥料の原料のほとんどは海外からの供給に 依存しており、国際的な動向に影響を受けやすい構造となっている。こうした中、近年の世界的な肥料需要 の増大を背景として、一時的に肥料原料の供給がひっ迫し、肥料原料及び肥料の価格が高騰する事態も みられたところである。 将来にわたって国民に安全な食料を安定的に供給するとともに、我が国農業の持続的な発展を図って いくためには、資源の有効活用と肥料の安定確保の両面から、総合的な対策を講ずることが重要である。 このため、農林水産省では、農業現場における取組として、 ① 土壌診断に基づく施肥設計の見直し、効率的施肥技術の導入等による適正施肥の徹底 ② 耕畜連携や食品リサイクルなどを通じた、国内の有機性資源の循環利用の促進 ③ 有機農業をはじめとする環境保全型農業の推進 を図っているところである。 加えて、肥料の安定確保を図る上では、海外の肥料原料の安定確保が重要となることから、今後の効 果的な施策の方向を明らかにするため、平成 21 年 8 月より「肥料原料安定確保戦略会議」を開催し、海外 資源の確保に係る詳細な知見や具体的施策を有する関係省庁や関係業界等との連携の下、対応策を検 討してきたところである。 本論点整理は、こうした検討を踏まえ、肥料原料の安定確保に向けた今後の取組の方向性について、 関係方面から提起された事項を整理したものである。 2 化学肥料需給の現状及び価格動向 2.1 化学肥料の供給の現状 肥料は継続的な農業生産に不可欠な資材であり、植物体が特に大量に必要とする窒素、りん酸及び加 里は肥料の三要素と言われている。 肥料は、大別すると、無機物を主成分として化学的に生産される化学肥料と、たい肥やなたね粕などの 有機質肥料に分けられるが、肥料成分の供給の大部分を担う化学肥料については、我が国は、その原料 のほぼすべてを輸入に依存している。 2.1.1 窒素 窒素成分の国内化学肥料メーカーへの主な供給形態は、アンモニア、尿素及び硫安（硫酸アンモニウ ム）である。アンモニアは大気中の窒素を利用して工業的に生産されるが、窒素の固定には多くのエネルギ ーが必要であり、天然ガスや原油から製造されるナフサが使用されている。尿素や硫安もアンモニアから製 造されることから、その原料も元来は天然ガスや原油である。 アンモニア・尿素は国内でも生産されているが、我が国ではアンモニアはその需要量の 14％、尿素は 36％（いずれも平成 20 年度、工業用を含む）を輸入によりまかなっている。その主な供給国は、アンモニア 1 はインドネシア、イラン、尿素はマレーシア、中国となっている。 また、硫安は、主に化学繊維の原料や鉄鋼の生産過程で発生する副産物（それぞれ「回収硫安」、「副 生硫安」と呼ばれる）であり、関連産業の生産の動向に応じて国内生産は減少傾向にある。 2.1.2 りん酸 りん酸成分の国内化学肥料メーカーへの主な供給形態は、りん鉱石とりん安（リン酸アンモニウム）であ る。りん鉱石はりん安の原料であるほか、過りん酸石灰などその他全てのりん酸肥料の原料となっている。 我が国にはりん鉱石の鉱山は存在せず、その全量を輸入に依存しており、国内で生産されるりん安も輸 入りん鉱石が原料である。平成 20 年の輸入量は、りん鉱石が 78 万トン、りん安が 49 万トンである。 りん鉱石の主要生産国は、中国、米国、モロッコ、ロシアであり、これら 4 カ国で世界の産出量の 7 割を 占めている。このうち、米国は、りん鉱石を戦略物資と位置づけてその輸出を停止しており、現在はりん安 のみを輸出している。 我が国は、りん鉱石については、主に中国（37％）、モロッコ（20％）やヨルダン（24％）からりん安につい ては、主に米国（77％）、中国（8％）及びヨルダン（9％）から輸入している（かっこ内の数値は平成20 年のシ ェア）。 2.1.3 加里 加里成分の国内化学肥料メーカーへの主な供