防振ゴムの疲労特性 - [鉄道総合技術研究所]文献検索.PDFVIP

防振ゴムの疲労特性 半坂　征則 鈴木　　実 間々田祥吾 材料技術研究部 同 総務部 （防振材料　主任研究員） （同　副主任研究員） （課員） はんさか　まさのり すずき　みのる ままだ　しょうご はじめに し荷重が載荷されるという厳しい条件において使用される 　鉄道において車両や軌道，構造物および電気設備の各分 ケースが多いといえます。また，一般に防振ゴムは紫外線 野で多種多様な防振ゴムが用いられています。例えば，軌 や温度変化（高温度側の方が劣化因子として厳しい）等の 道では一般にレール底面－締結装置間に軌道パッドが敷設 環境劣化因子に影響を受けやすい性質を有する中，長期間 されており，この材料がいわばクッションとなり車両走行 使用されるケースが多いといえます。したがって，防振ゴ に伴い発生する周期的・衝撃的な振動が締結装置以下の構 ムの劣化評価においては荷重のみならず温度（主として高 造に直接伝わらないような働きをします。また，車両で 温）等の環境劣化因子も考慮する必要があります。ここで は図1 および図2 に示すように台車枠―車軸軸箱支持装置 は代表的な防振ゴムとして車両における軸ばねゴムを主な 間を弾性連結する円錐積層ゴム式軸ばね（以下，軸ばねゴ 対象に，疲労劣化評価方法とそれによって明らかにされた ムと称します）や車体を弾性支持する空気ばねなどの防振 劣化特性について概説します。 ゴムが用いられています。これらは鉄道を安全かつ安定に 運行させるうえで重要な部材である一方で，大きな繰り返 劣化メカニズム 　まず，防振ゴムで想定される主要な劣化因子および劣化 メカニズムについて考えます。ゴムにおいては一般に，図 3 に示すように，炭素と水素を中心とする原子が連続的に 結合して分子と称される一群の原子の集合体を形成し，こ れが材料の骨格をなします。このとき分子は鎖状に形成さ れるので，これを分子鎖と呼ぶこともあります。ゴム材料 の劣化はこの分子鎖の変状に起因するものと考えられます。 　防振ゴムは使用に伴い様々な劣化因子の作用を受けます。 その中で繰り返し応力の作用（以下，これによる劣化を疲 労劣化と称します）に加えて，ゴム材料を構成する分子が 図1　軸ばねゴムの車両における搭載状況 空気中に存在する酸素と化学反応して変質する劣化（一般