近世初期の文人山荘における 視点場 眺望の景観構造.PDFVIP

近世初期の文人山荘における - 視点場 眺望の景観構造 ―京都郊外の光悦寺・詩仙堂・大悲閣・木下長嘯子山荘・藤原惺窩山荘を対象として― 1 2 3 山口 敬太 ・出村 嘉史 ・川崎 雅史 1 学生会員 京都大学大学院工学研究科 博士課程（〒615-8540 京都市西京区京都大学桂４） E-mail:Keita.Yamaguchi@t23x1791.mbox.media.kyoto-u.ac.jp 2 正会員 工博 京都大学大学院工学研究科（〒615-8540 京都市西京区京都大学桂４） E-mail: demu@art.mbox.media.kyoto-u.ac.jp 3 正会員 工博 京都大学大学院工学研究科（〒615-8540 京都市西京区京都大学桂４） E-mail: kawa@art.mbox.media.kyoto-u.ac.jp 本研究は，近世の文人山荘を対象とし，文人らの地形認識を文人の残した手記をもとに明らかにしなが ら，山荘の立地特性と，固有の地形・景観特性をいかした景観デザインの手法を明らかにするものである． 対象とした山荘は，地形の凹凸を利用して，隠れ場所としての囲繞性と，風景嘆賞場所としての眺望性を， ともに満たしている場所が立地場所として選ばれていた．山荘では，凹地形を利用し，山深すぎず，都か らも近くに居ながら，効果的に隠れられるような視点場をつくりながら，敷地の内で閉じるのではなく， 周囲の野や山を自らの庭に見立てて，遠望できる視点場をつくるなどといった，大きなスケールで視点 - 場 眺望の景観構造を有していたことが示唆された． キーワード :視点場，眺望，囲繞景観，景観構造，近世，文人 5m １．はじめに と「数値地図 （標高）」をもとに，「カシミール」 を用いて３次元地形モデルを作成した． （１） 研究の背景と目的，方法 京都郊外の近世の文人山荘の立地とその景観デザイン （２） 研究の位置付け をみると，周囲のわずかな地形の起伏や緑地がつくる景 本研究の視点として，庭園・建築単体のスケールを越 観特性を非常に効果的に活かし，建築や庭園のスケール えて，周囲の地形や山がつくり出す空間特性に着目し， を越えて，優れた風景づくりを行っている様子が伺える． 景域という視点で風景づくりを評価する点に特徴がある． 都市づくりに，都市の個性である地形や山並みの景観特 庭園史・建築史という視点ではあまり評価されていなく 性を活かすという視点でみると，歴史のなかの風景づく とも，さらに大きなスケールで捉えれば，非常に優れた りの優れた事例から学ぶべき知見は多い． 景観デザインの実例が多々ある． 本研究では，近世の文人山荘を対象とし，文人らの地 樋口は，棲息地の景観，生きられる景観を成り立たせ 形認識を文人の残した手記をもとに明らかにしながら， る場所にかくされた固有の特性を把握するために，凹型 山荘の立地特性と，固有の地形・景観特性