研究代表者車谷浩一-ホーム国立研究開発法人科学.PDFVIP

戦略的創造研究推進事業 ＣＲＥＳＴ 研究領域「先進的統合センシング技術」 研究課題 「安全と利便性を両立した空間見守りシステム」 研究終了報告書 研究期間 平成１７年１０月～平成２３年３月 研究代表者：車谷浩一 （独）産業技術総合研究所 情報技術研究部門 マルチエージェント研究グループ長 - １ - §１ 研究実施の概要 本研究は，リアルタイムで取得したセンシングデータの統合解析を用いた新しい情報サービスを， 単一アーキテクチャ上において提供する空間見守りシステムの実現を目標とし，平常時には利便 性を提供するシステムが，非常時には非常時用モードへと自動的に切り替わり安全・安心感を提 供する非常時用システムとして動作するような統合システムの実現に重点を置いて研究開発を推 進した．ユーザが使用する携帯情報端末としてスマートフォン(Windows Mobile) ならびに携帯電 話(iAppli 等の Java アプリケーション)を想定し，センサ情報を送受信する方法としては ZigBee, IEEE 802.15.4 ならびに Bluetooth, サーバとの通信は携帯電話網上での TCP/IP を前提としたソ フトウェアアーキテクチャを用い，具体的なサービスイメージとして，１）平常時には利便性を提供す るナビゲーションサービスを提供し，非常時には非常時用情報を自動的に配信する「屋内自律型 ナビゲーション」，２）ユーザの身体状態を生体センサでリアルタイムに計測し，遠隔地の家族や医 療関係者がユーザの身体状態を見守れる「遠隔生体見守りサービス」を実現した． 屋内自律型ナビゲーションでは，ＧＰＳ信号の利用が困難な屋内空間を想定し，ユーザが自身 の位置・移動軌跡情報を自分の手元で把握することができる屋内自律型測位システム，平常時に はユーザへの利便性を提供する平常ナビゲーションを実行しつつ，非常時には無線センサネット ワークを用いて非常信号を配信し，最寄りの非常口までユーザを誘導するための情報を提供する 非常時ナビゲーションを実現した．このシステムは，1) ZigBee, IEEE 802.15.4 の通信パケットを用 いて，環境に設置された無線センサネットワークノードからの複数の測位用パケットを，確率推論を 用いて解析し，ノイズや信号の欠落に頑健で対象の位置・移動軌跡を連続的に計測できる測位シ ステム，2) 測位ビーコンのみを用いて非常信号を配信し，非常時においても平常時と全く同一の 通信量・帯域幅で非常信号を配信するシステム，3) 非常信号を受信すると自動的に近くの非常口 までの経路情報を提供する平常時・非常時兼用の屋内ナビゲーションシステムから構成され，実 環境である横浜市みなとみらい地区のランドマークプラザにおいて動作を検証した．従来の 2.4 GHz ISM 帯の無線信号を用いた測位システムでは，信号の伝搬時間差を用いたシステムは特殊 なハードウエアが必要という制約があり一般に高価である．一方，無線信号の強度を用いたシステ ムは比較的安価であるが，信号の一時的な欠落、雑音、マルチパスによる信号強度の変動などに よって測位結果が大きく影響を受けるため，対象の連続的な位置変化を的確に計測できない（測 位結果が非連続的に変化し、実位置とは全く異なる場所を示すという問題）という問題があった． 本システムはこれらの問題点を解決するものともなっている． 遠隔生体見守りシステムは，人の身体・活動状態を常時見守り，平常時においては日頃の活動 状態を記録し健康の維持に関する情報を提供し，また非常時には自動的に家族等へ連絡を行う サービスを実現するものである．1) 「モバイル生体センサ」と呼ばれるユーザが自分で装着ないし は携帯可能な超小型・軽量のセンサデバイス（加速度・温度・湿度・気圧・心電位を同時に計測可 能，Bluetooth 通信，SD カードによるデータの蓄積，リチウムイオン電池による動作）からの情報を， 2) 携帯情報端末で受信・解析し，携帯電話網を用いてインターネット上のサーバへ転送し，3) ア プリケーションサーバ上で追加的な解析を実行する．このシステムの特徴として，デー