平成27年度病害虫発生予察特殊报2.PDFVIP

平成27 年度 病害虫発生予察特殊報 第 2 号 平成 27 年 11 月 30 日 茨城県病害虫防除所 TEL ：029- 227- 244 5 トマト退緑萎縮病の発生について 病 害 名 ：トマト退緑萎縮病 病 原 体 名 ：トマト退緑萎縮ウイロイド Tomato chlorotic dwarf viroid (TCDVd) 発 生 作 物 ：トマト １．発生確認の経過及び国内での発生状況 (1) 平成27 年 11 月，県南地域の施設トマト圃場において，上位葉の退緑，黄化，株の萎縮症状を 呈した株が確認された。県農業総合センター園芸研究所においてRT-PCR 法による検定及び塩 基配列の解析を実施した結果，本県では未発生のTomato chlorotic dwarf viroid （TCDVd）による トマト退緑萎縮病と確認された。 (2) 本病の国内における発生は，平成18 年に広島県で初めて確認され，平成19 年に千葉県で確認 されたが，いずれも速やかに防除が行われ，終息が確認されている。本県においても，発生が 確認された施設では防除対策が実施され，施設内で終息する見込みである。 ２．病徴 TCDVd に感染したトマトは，上位葉の退緑及び黄化症状 （写真1），株の萎縮症状（写真2）， 花器官の奇形，結実不良（果実の奇形，小型化）を示す。生育初期に感染した場合ほど収量が大き く減少する傾向がある。葉の退緑及び黄化症状，株の萎縮症状は， トマト黄化葉巻病（病原ウイル ス：TYLCV）の症状と酷似する。 罹病株 健全株 写真1 葉の退緑 ・黄化症状 写真2 株の萎縮症状 ３．伝搬方法等 本ウイロイドはトマトの茎葉，根，花器官等ほぼ全組織中で増殖し，管理作業時に手指やハサミ 等に付着した汁液を介して，容易に隣接株へ伝搬される。土壌伝染は認められず，また，コナジラ ミ類等の微小害虫によって媒介されることはないと考えられるが，実験条件下ではマルハナバチの 受粉活動によって媒介されることがある。 種子伝染については，汚染株から採取した種子の外皮に本ウイロイドが付着することが知られて いるが，国内においてトマトで種子伝染した例は確認されていない。 ナス科植物ではトマト，バレイショ及びNicotiana glutinosa でのみ病徴を発現し，ペチュニア， ピーマン，ナス等では，感染しても病徴を現さない （無病徴感染）。 ４．防除対策 (1)栽培期間中は定期的に圃場の見回りを徹底し，発病株の早期発見に努める。 (2)本病の発生を確認した圃場では，以下の対策を実施する。 ① 発病株は伝染源となるため，速やかに抜き取ってビニール袋等に入れて施設外に持ち出し， 地中深くに埋める等，適切に処分する。摘芽，摘葉等による残渣も同様に処分する。 ② 収穫，摘芽，摘葉，誘引などの管理作業には，使い捨て手袋を使用し，畦ごと等一定の間 隔で新しいものに取り替える。 ③ 収穫，摘芽にハサミや刃物を使用する場合は，畦ごと等一定の間隔で消毒する。消毒液は 有効塩素濃度0.5％以上の次亜塩素酸ナトリウム等を使用し，15 秒以上浸漬する。なお， 酸性薬品や消毒用アルコールでは十分な消毒効果を得られない。 ④ 受粉にマルハナバチを利用している場合は，ハチを介して施設内外へ感染が拡大する恐れ があるので，ハチの使用を中止し，ホルモン処理に切り替える。 ⑤ 収穫終了後，トマトの汁液が付着する可能性のある施設構造物，器具類やカート類をすべ て