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世界のビジネス潮流を読む AREA REPORTS エリアリポート 世 界 World 美容市場に挑む ジェトロ海外調査部国際経済研究課　　吾郷　伊都子 世界の美容市場は拡大の一途をたどっている。近年、 生活に余裕が出た段階で消費に乗り出す分野だ。新興 市場開拓のための投資が世界的に増加している美容業 国で所得が増え、出費を美容に振り向ける機会が増加 界。日本企業の進出も進む。成功の裏にあるのは、市 してきたことの表れといえよう。その他、選択肢の拡 場特性や現地ニーズの徹底的な把握だ。 大と低価格化により製品・サービスが購入しやすくな ったことも、市場拡大の背景として指摘できる。 新興国でも美への出費が… 大昔から、人はきれいになる方法を追求し続けてき 製品展開の広がりが加速 た。古代エジプトやローマ帝国にも存在した化粧がそ 市場の拡大に伴い、企業による投資も活発化してい の証しである。現在でも、美の向上を目的とした各種 る。新規投資額はリーマン・ショック時を除き拡大基 製品やサービスが提供されている。世界の美容市場は、 調にあり、投資件数も12年には過去最多の91件を記 2017年には00年比2.7倍となる見込みだ（図1）。 録（図2）。03年から13年9月までの案件のうち 美容市場拡大にはいくつか要因がある。その一つが 47.9％が、投資先の成長潜在力の取り込みを動機とし 消費者層の多様化である。近年、女性用のみならず男 たものだった。投資先の上位は、中国、インド、米国、 性用化粧品が好調で、中でも男性用香水の市場規模は、 ロシア、と新興国が目立つ。13年に発表された案件 中東アフリカと中南米で2桁成長を続けている。また、 としては、米国PGが南アフリカ共和国にある工場 アンチエイジング化粧品への需要が高まるなど、消費 を拡張、英国ユニリーバがインドにアジア初のデオド 者層が従来と比べて多様化しつつある。 ラント工場を設立、フランスのロレアルが販路拡大の もう一つは新興国の経済成長だ。中間層の厚みが増 ためケニアの化粧品メーカーを買収――など、新興国 す新興国では、市場が今後数年間は年8％程度のペー の消費者ニーズに対応するための投資が多く見られた。 スで成長を続けると見込まれる（図1）。美容製品は 投資形態別では、製造拠点の設置が最多（03年の 30件から12年は34件）だが、近年は販売・マーケ 図1 美容・パーソナルケア製品の市場規模 図2 世界の化粧品関連投資